153.Sな彼女とNな彼

クリニックで診察してもらい


しばらく休ませてもらった。




さっきまでママの雰囲気だった先生は


白衣を羽織って医師の顔をしていた。




「間宮さん、紹介状書くから総合病院で検査してきてね」




先生にそう言われた。




家から車で十五分ほどの南総合病院の産婦人科。




「念のためだから」と言われたから


そんなに急ぎではないと勝手に思い込んだ。





ベッドから起き上がると


パパさんらしき人が水を持って来てくれた。




「点滴したから飲まなくていいけど喉渇いたでしょ?」



「ありがとうございます」



「社員証勝手に見ちゃった。お姉さん、あおすけの会社の人?」



さっきと違って妙に馴れ馴れしい。



「そうですけど」



ぶっきらぼうに応えた。



「何であおすけの恋人なあこの着ぐるみはないの?」




ドキリとした。


あおすけはデザイナーさんが考えたキャラで


なあこは私が考えたキャラ。


社長の思いつきでコラボになったから


公式には恋人設定なんてない。




「まだ作ってないんです……」




「そうなの?俺なあこの方が好きなんだよね。だから……」



「本当ですか?!」



嬉しくて声を弾ませた。



「えっ、うん(笑)。やけに嬉しそう……」



「なあこの作者は私なんで!」



ついドヤ顔をしてしまった。




「あはは、そうなんだ(笑)」




爆笑する顔は学生みたいに見える。




やってしまった。




恥ずかしさを誤魔化すために話を変えた。



「お若いパパさんですね」



「俺?」



「わた君のパパですよね?」



「違う違う(笑)。亘は薫姉さんの子供。つまり俺は若いおじさん」




薫先生の弟……にしても若い。




「おじさんって響きが似合わないですね(笑)」




「俺まだ研修医だしね」




ドヤ顔をされた。




「あ、あなたもお医者さんなんですね」




海崎悟かいざきさとる




「海崎さんも……」




「悟って呼んでよ。実結ちゃん」




やっぱり馴れ馴れしい。




「私は悟さんより年上なんですけど?」




「知ってるよ。実結ちゃんは彼氏いるの?」




「います」




何なの、もう。



押しの強さが紀樹みたい。




「医者?」




「違います」




「じゃあ、俺にしない?」




「何を……?」




「俺を実結ちゃんの彼氏にしない?」




何言ってんの、この人。




「しません。大体研修医ってモテますよね?」




「モテるけど肩書き目当ての子には興味ない」




「さっき肩書きふりかざしてドヤ顔しましたよね?」




「痛いとこ突くね(笑)。俺の家系みんな医療関係だから、普通の子と結婚したいんだよね」




「何で私……?」




「顔がタイプだから」




は?




「それだけ?」




「俺は元々年上が好きだし、一般OLで見た目が美人って最高じゃん」




「私は美人ではないですよ」




「いやいや、美人でしょ(笑)」




当たり前みたいに言われて照れてしまう。




「そんなこと……」




「照れちゃって。可愛い」




「からかわないでください」




薫先生がカーテンを開ける。




「うちの患者をナンパしてんじゃないわよ」




「自分の病院じゃ出来ないしさー(笑)」




「ごめんね、間宮さん。バカ弟は無視していいからね」




「薫姉さんひどーい(笑)」




わた君も顔を覗かせた。




「おねえちゃん、もうしんでない?」




「生きてるよ(笑)」




「ぼーんしてごめんね」




「いいよ。もう大丈夫」




ウルウルした目が可愛すぎる。




「なかなおりのあくしゅー」




握った手が小さくて感動した。





早く私もわた君みたいな男の子が欲しいな。





なんて。





何年後になるんだろうか。










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