92.Sな彼女とNな彼

「ハロウィンってさ、悪霊を追い払うためにお化けの格好するわけでしょ?」



「実結さん……」



「セクシーコスプレとかいらなくない?」



「もう諦めましょう」




私の引いたくじは『ナース』だった。



超ミニスカートの。




「朔くんだけバンドメンバー特別衣装ってずるい」



「僕が決めたわけじゃないんで(笑)」



「大体さ、最近は看護師さんってパンツでしょ?」



「もう諦めましょう(笑)」



「ミニスカートなんて寒いよ」



「問題そこっすか?(笑)」




衣装と飾り付けの準備。



ドリンクとデリバリーの手配。



テーブルの配置と人手の確保。



後から来る参加や不参加の連絡。



小口経費の管理。




通常業務をこなしながら



慌ただしく準備をしていた。




私は大阪の新店舗の準備もあるから



早めに朔くんに幹事全部を任せたいところ。




しかし



「実結さん、僕バンド練習に行ってきます」



定時後は朔くん不在で仕方なく



一人でレシートや備品の整理。





ストレスが溜まります。




しかも



倉庫の鍵を朔くんが持ったままだし。



社長もいるから練習場には行きたくないけど



さすがに終わるまで待てない。





「失礼しまーす」




曲の終わりを待って会議室に入ると



社長、部長、課長、朔くん



四人から視線を向けられる。




「笹下くんに倉庫の鍵を返してもらいに来ました」




朔くんから鍵を受け取って帰ろうとすると


社長から呼び止められた。




「間宮さん、一曲聞いて行ってよ」




もちろん断れるわけもなく。




「はい。是非ともお願いします」




早く帰りたい。




そう思っていたのに。




曲が始まると



皆があまりにもかっこ良くて



立ち尽くした。




しかも!



「エリシマムのコピーやるんですね!」



私の青春時代に流行ったロックバンドで


すごく好きだった。




「おっ、間宮さんは世代か。笹下くんはピンと来てなかったんだけどな(笑)」




社長は笑っていたが


ジェネレーションギャップに


微妙に傷つく。




「かっこ良かったです!もしかして特別衣装って軍服ですか?」




「そうだよ。良かったら、もう一曲聞いてく?」




「聞きます!」






もっと素人全開だと思っていたのに



楽器も歌もとても上手くて聞き惚れた。




汗を流してドラムを叩く朔くんを見て



迂闊にも見とれてしまう。




ハロウィンが盛り上がるように



もっと頑張りたいと思った。












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