82.Sな彼女とNな彼

「朔くん、私って地味?」




席に戻ると朔くんは元の隣に座っていて


小声で聞いてみた。




「実結さんは地味ではないですね。派手でもないですけど」




普通、と言われた気がした。




「私も先輩たちみたいに華やかにした方がいいのかなあ」




周りを見渡す。



雑誌やドラマで見るような


キラキラとふわふわ。




「どうしてですか?」




面と向かって地味と言われて


結構な精神的ダメージを受けたんだよ。




「やっぱり綺麗な方がいいでしょ」




私が言うと、朔くんは少し考えて



「実結さんはそのままで綺麗ですよ」



とボソッと答えた。




「あはは。ありがとう」




後輩に気を使わせたものの



褒められると嬉しくて。



引き出しのおやつを分けてあげた。







お昼休みになっても



西川さんと三鷹さんは帰って来なくて



きっとそのままランチへ行ったんだと思う。





私ね、おとといは一晩中ずっと王子と一緒だったのよ





会議室での言葉が頭をかすめる。



三鷹さんのハッタリだと思う気持ちと



万が一にもホントウだったらと思う気持ちが



交錯する。




本当だったとしたら、何?




どちらにしても私には関係ない。




関係ないよ。






美味しい物でも食べに行こうっと。



お財布を手に立ち上がって



今日は同期の舞が休みだと思い出した。





こんな日に一人ランチは嫌だな、と


思いながら外に出ると


目の前を歩く朔くんを見つけた。




ラッキー。




「朔くん! 何食べに行くの?」




「うどんっすね」




「私も一緒に行っていい?」




「あっ、はい」




朔くんについて行くと



路地の中にある隠れ家のような



お店に着いた。




「うわー、こんなお店があるなんて知らなかった」




店内は薄暗くて昼であることを忘れそう。




「どれも安くてウマイっすよ」




「どうしよう。迷っちゃうね」




同じ日替り定食を頼んで



お会計は別々でお願いしたのに



朔くんが私の分まで支払って



お金は受け取ってくれなかった。





「私が先輩だからって気を使わなくていいからね」




と言うと、朔くんは少し考えて




「実結さんを先輩とはあまり思ってないです」




とボソッと答えた。










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