54.Sな彼女とNな彼

とろとろのオムライスは


ソースと絡み合って


まさに絶品だった。




「はー、美味しかった」




「やろ? まあ、俺は普通のオムライスのが好きやけどな」




「それなら何で……」




このお店を選んだんですか?なんて


聞かなくても


私のためだと気が付いた。




「やから、マミヤちゃんが俺に作る時には普通のオムライスにしてな」




「それは無理です」




流れで「うん」って言いそうやったのに、と


西川さんは言うけど、そもそも料理は苦手で


オムライスは作ったことがない。




半熟卵のオムレツにすることも


薄焼き卵でチキンライスを巻くことも


できる気がしない。




やっぱり男の人は家庭的な子がいいよね。




思い返せば彼氏の野本くんに


手料理を作ったことも


作ってあげたいと思ったことも


一度もなかったな。




ダメダメな彼女だ。




「マミヤちゃん?」




表情を曇らせた私の顔を


彼が心配そうに覗き込んだ。




「私、料理できないんです」




ガッカリしたんだろうな。




「そうなんや」




短く応えた彼が私から視線を逸らした。






もう私のこと嫌になったかな。






一目惚れなんて



結局は上っ面のことだけで



相手の中身までは



何にも知らないわけで。






彼も、私も、お互いのことを



よく知らなかったんだから。






深みにはまる前で良かった。






深みにはまる前なのに




胸が締め付けられて




とても苦しい。










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