35.Sな彼女とNな彼

いきなり何を占うかと聞かれても


何も出てこない。




とりあえず。




「えっと……、全体運を……」




先生は頷いて


カードをまとめると


手早くカットして


数枚を並べた。




「あなたは今年から来年にかけては運勢はイマイチだから、動くなら春以降」




初っぱなからイマイチと言われて


ダメージを受けた。




「そうですか……。恋愛運、は……?」




さっきのカードを脇に置くと


今度は違うタロットを広げて


同じように並べた。




一枚めくる。




「恋人はいるんですね」




どうして分かるんだろう。




「はい」




「離れたところにいる。もしかして遠距離かな」




「そうなんです。会えなくて、もう駄目かなって思ってるんですけど……」




「じゃあ、相手のことを思いながらカードを混ぜて」




「私がですか?」




「そう」とカードを伏せると


私に目を閉じて


時計回りに混ぜるように言った。




静かに目を瞑る。




パッと浮かんだのが


野本くんではなくて


西川さんの笑顔で。




ビックリして目を開けた。




目を閉じても


野本くんの顔が思い出せない。




どんな顔をして笑ってたっけ?




最後に会った時


面倒くさそうな態度で


会いたいと言うのが怖くなった。




占ってもらわなくても


結果は出てるよね……。




手を止めて目を開けた。




先生がカードを集めて


綺麗に一列に並べた。




「好きなカードを三枚選んで」




選んだカードを表に返しながら


目の前に並べる。




『月』のカード。




「状況的には良くないけど、あなたの行動次第かな」




「行動って何をすれば……」




先生がカードを数枚めくる。




「彼はあなたを待ってるよ」




「本当ですか?!」




待ってる、の言葉が


胸に響いた。




「恋愛も仕事も転機だから、やりたいことを探しておくといいよ。ただ決断は来年の春以降ね」




「今の仕事は好きですよ」




「もっと向いてる仕事がある」




「何ですか?」




「誰かに何かを教える仕事」




「教える?」




「例えば、学校の先生や我々みたいな占い師も向いてるよ」




「まさか(笑)」





前にも誰かに言われたような?




何か大切なことを忘れてる気がする。




笑い飛ばした未来へ通じる道が


拓けていることには気付いていなかった。




臥待月ふしまちづきの出は遅い。




ゆっくりと運命は動き出していた。











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