33.Sな彼女とNな彼

ハガキを半分残したまま


その日は仕事を終えた。




同期の嶋村さんに誘われて


会社近くのイタリアンの店で


夕飯を食べる約束をしていた。




お店に行くと


奥に嶋村さんの姿が見えて


互いに手を振る。




手前にはもう一人


ふんわりした女の子が


チョコンと座っていた。




「園子?」




声を掛けると


満面の笑みで振り返った。




「実結、久しぶり~!」




「わ、やっぱり! どうしてこっちに?」




園子は遠方の営業所で


ずっと働いている。




「本社で会議だよ~。実結は本社配属になったんだね。おめでと」




隣に座って握手をした。




「ありがと。ようやくやりたい仕事が出来るよ~」




企画部に行けば


新しいキャラクターの提案会議にも


参加できる。




「舞と一緒に仕事することもあるの?」




「うーん、課が違うからどうかなあ?」




嶋村さんの方を見て


店員さんが持ってきた水を


一口飲んだ。




嶋村さんは私と園子のやり取りに


驚いたみたいだった。




「園子と間宮さんって仲良かったっけ?」




「新人合宿で同じ部屋だったんだよね。配属が分かれてからは殆ど会ってないけど、電話では時々……」




「そっかー。えー、私も間宮さんを実結って呼んでいい?」




「もちろん!」




「私も舞って呼んでね! 同期がどんどん辞めちゃって寂しかったんだ~」




パスタとピザを食べながら


思い出話に花を咲かせていた。





デザートを食べる頃


園子から彼氏のことを聞かれた。




「大学の時からの付き合いだもんね。そろそろ結婚?」




「ううん。彼氏が転勤してから上手くいってなくて……」




「すれ違いってやつ? もう会社辞めてついてくのもいいんじゃない??」




「それも考えたんだけどね。ついて来いって言われてないのに押し掛けてもねえ。今はせっかく本社勤務になったから辞めたくないし」




うーん、と三人で頭を悩ませる。




舞が「そうだ!」と目を輝かせた。




「占いでみてもらうってのはどう?」




「う、占い??」




「駅前の占い師、よく当たるって評判なんだよ。行こうよ!」




占い自体は好きだけれど……。




「行ったことないし……」




赤の他人の言葉で


人生を決めて良いか迷う。




「大丈夫だって! 園子も行くよね?」




「超興味ある~」と答えるから


デザートを急いで食べて


占い師の所へと行くことになった。











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