16.Sな彼女とNな彼

「真面目で誠実な人です」




大人しくて地味な人。




「俺と同じやん」




「どこがですか?!」




社交的で派手だし。




「真面目やし、誠実やもん」




「色んな女の子に手を出してる人を誠実とは言いません」




受付の谷本さんと


経理の三鷹さんと


きっと他にもいるんでしょ。




「手を出してるんやなくて、俺が手を出されてるだけ」




悪びれもなく言う。




「応じてる時点で同じでしょ」




「俺には彼女もおらんし、貞操を貫く意味なんかないやろ?」




「それは……」




そんなもの?!




普通はお付き合いしてる男女が


そういう関係を持つんじゃないの?!




彼にさも当然みたいに言われると


自分が間違ってるような気がして来る。




「マミヤちゃんが彼女になる時には他の女の子の誘いは断るから大丈夫やで」




「はい?」




私が彼女になるとか


そんな話はしましたっけ??




「俺は浮気はしないから心配ない……」




「そうじゃなくて。私はフリーでも他の女の子と関係あるような人とは死んでも付き合いませんから」




「他の子とはしなければ付き合ってくれるってこと?」




「違います。普段から貞操を大事にする人としか付き合わないってことです」




「じゃー、普段から貞操を大事にすればええんやな?」




へっ?




「え、いや……」




あなたみたいな人は無理だと


言ってるつもりなのに。




「ちゃんと他の誘いは断る。それならええんやろ?」




「はあ……」




「そういうことやんな?」




ニコッと笑顔を見せられると


言い争う気が失せた。




まあ、どうせ無理に決まってる。




「一年後に貞操守ってたら考えます」




「約束やで?」




「はいはい」と気のない返事をして


私はサーバー室を出た。










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