36.Sな彼女とドSな彼

残業で遅くなったけど


会社のすぐ近くのカラオケに


サヤカと二人で入った。




早速歌い始めるサヤカに続いて


当たり障りのない失恋ソングを入れる。




次に流れてきた前奏に


慌ててストップボタンを押した。




「何するんですか?!」




「その歌は禁止や」




「何を歌おうが私の自由でしょ」




「あかんもんはあかん」




俺が泣いてしまうから。




サヤカはしばらく文句を言いながら


新しい曲を入れた。




「あなた」や「君」の部分を


元カレ「亮太」の名前に変えて歌う。




聞いてるコッチが恥ずかしい(笑)。




サヤカは相手の出世のためにと


自ら身を引いた。




好きなら離さなければいいのに。




そういう単純な問題じゃないことは


死ぬほどよくわかった。




だんだんとバラードに片寄ってきて


しんみりした気分になる。




声を震わせながら


歌ってる本人も辛いんやろうけど


俺も泣きそうになるわ。




結婚できないから別れるなんて


馬鹿馬鹿しいと思ってた。




なのに


紙切れ一枚には人生の重みがあった。




女の方がそれをよく理解してるんやな。











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