31.Sな彼女とドSな彼

"SAYAKA"




「サーヤ! 会社の冷蔵庫に納豆巻いれんな!」




油性マジックで名前の書かれた納豆巻を


冷蔵庫に見つけた。




「納豆巻を机の引出しに入れてたら昼にはヌメヌメになっちゃいますよ!」




今日もタヌキのサヤカが


ポンポコと鳴いている。





月曜日の朝。




アイスコーヒーを飲もうとして


給湯室の冷蔵庫を開けると


"SAYAKA"と書かれた食料が


所狭しと並んでいた。




完全に冷蔵庫を私物化しやがって……。




「何で関西の人って納豆嫌いなんですかね?」



「あほか。いつの時代の話をしてんねん。今は関西でも納豆食ってる人のが多いやろ」



知らんけど。



「そうなんですか?!」



「誰も納豆がどうの言ってるんちゃうねん。お前だけの冷蔵庫やないんやから……」



「あ、入れてるのは好きに食べてくれていいですからね」




ほな、何で名前書いてんねん。




「もうええわ。怒る気失せた……」



あほ過ぎて文句言う自分があほみたいや。



「西川さん、コーヒーは?」



「忘れるとこやったわ。サーヤ入れて」



「しゃーないなあ」



俺の真似か?!



腹立つ!




「サーヤ! 入れ過ぎや!」




今にも溢れそうなコーヒーが


表面張力でギリギリ止まった。




「あ、すんませーん……」




「何をボーッとしてんねん」




いつもに増して様子がおかしい。



テンションが無駄に高かったり


異様に低かったり。




「ふなっきーと喧嘩でもしたんか?」



付き合ってる年下彼氏の名を出すと


サヤカがビクッと反応した。



わかりやすっ!




「そんなんじゃないんです。西川さんこそ最近元気ないですよね。彼女と喧嘩でもしてるんですか?」




「俺はもう別れたから」




「そーなんですね。お気の毒さま」




サラッと流しやがって……!




「揉め事ははよ解決せなあかんで?」




「そーですよね……」





サヤカがふなっきーとの別れを意識して


既に付き合いが終息に向かってるなんて


これっぽっちも知らず


二人には上手くいって欲しいと思ってた。





これはほんまやで?











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