武将隊

木全伸治

名古屋城

俺は、東京でエロゲーのライターとして働いていました。プロならば、受けた仕事は最後まで全力でこなすべきだと思い、何度、リテイクが出ても徹夜でテキストを修正したりしてました。ただ、さすがに中にはリテイクが多すぎてこなしきれなくなって、途中で降りた仕事もあります。

仕事を降りるなんてプロ失格という人もいるでしょう。

ですから、俺も限界ギリギリまでカラダを酷使して日々頑張りました。ですが、その結果として、睡眠不足等の不摂生による高血圧が原因の脳卒中(脳内出血)で倒れ、一命を取り留めましたが、その後遺症で左半身に軽い麻痺が残る身体になってしまいました。いわゆる障害者です。

ま、一応PSで完全オリジナルの「しろがねの鳥籠」というゲームのシナリオを担当させていただきましたから、倒れるまで頑張ったことにも一応意味はあったと思っております。

脳卒中で倒れるまでカラダを酷使したのに、これで、頑張っていなかったとか、手を抜いてたとかいう人間はいないだろうとは思いますが、少なくとも文字通り死ぬ気で働いていたと胸を張って言えると思います。あれ以上頑張っていたら、死んでいたわけで、早死にする漫画家や作家が後を絶たないのを、身をもって実感した気分です。

で、一命を取り留めたとはいっても、左半身に軽い麻痺がある状態で、パソコンを両手を使ってのブラインドタッチはできなくなり、倒れる前に入っていた次の仕事をキャンセルし、東京のアパートを引き払って、両親のいる名古屋に不本意な形ですが、帰郷しました。

とりあえず、数か月ほどのリハビリ入院で、杖なしで歩行できるまで回復し、退院しました。で、医者からもウォーキングの運動はいいと言われてますので、リハビリのためJRさわやかウォーキングや名鉄ハイキングなどの自分のペースで歩けるウォーキングイベントに参加し、平日は名古屋城、徳川園、鶴舞公園の散策など、麻痺のある左足のリハビリのため歩きまわっています。

その中で、訪れるのが最も多いのが名古屋城です。名古屋城は名古屋の真ん中にあり、地下鉄の駅も近く、その気になれば名古屋駅から堀川沿いを歩いて名古屋城に向かうこともできます。また、名古屋に生まれたら、小学生ぐらいのときに社会科見学など何らかの学校行事で名古屋城には訪れているでしょう。そして、外身は立派だけど、中身はコンクリート造りの天守にがっかり感を子供ながらに感じるものです。誰もがガッカリするから、今現在、市議会では名古屋城の木造化の予算が論じられているのです。

名古屋城は、桜、梅、紫陽花など四季の移ろいも楽しめますし、春、夏、秋と季節ごとのお祭りも行われます。特に石垣に並ぶ、桜の木が満開の光景は圧巻です。

さらに、最近の名古屋城には、武将や忍者がいます。

この現代に武将に忍者とは奇妙な話ですが、観光客のおもてなしのために、名古屋おもてなし武将隊、徳川家康と服部半蔵忍者隊という二隊が日々、夏の暑い日も雨の日も名古屋城に出陣し、観光客相手に記念撮影などのおもてなしをしています。武将と聞くと堅苦しいイメージがありますが、武将隊の武将はみなさん気さくな方ばかりで、観光客との記念撮影を快く受けてくれます。小さいお子さんには、怖がられることもありますが、なんとかお子を怖がらせないようにする武将様の姿は何とも微笑ましい光景です。

名古屋おもてなし武将隊は、織田信長様、豊臣秀吉様、徳川家康様、加藤清正様、前田利家様、前田慶次様の六武将と、陣笠の踊舞(とうま)さん、なつさん、章右衛門さん、一之助さんの陣笠四名で構成され、平日は、武将一名陣笠一名で、名古屋城に出陣し、みなさんに記念撮影、華押(サイン)などのおもてなしを、土日、祝日は、武将三名以上で出陣し、演武のパフォーマンスで、名古屋城でみなさんのおもてなしを行っています。

忍者隊は、平日は二名程度で名古屋城に出陣し、土日には名古屋城か、中部国際空港(セントレア)などで演武を行ったりして、愛知を訪れる方々のおもてなしを。

忍者隊には、金髪の忍者、天(そら)さんがいて、小さいお子さんには忍者刀を渡して、忍者刀の構え方を教えたりして記念撮影に応じたりしています。

さて、話は代わりまして、リハビリの成功は治癒したと勘違いしているひとがいるようですが、リハビリとは調子の悪い機械に油をさすようなものであり、リハビリがうまくいったというのは、調子の荒い部分がなんとか動くようになっただけであり、完治したわけではありません。

脳卒中(脳内出血)の後遺症は、脳細胞が一部ダメになって、引き起こされるものであり、脳細胞は再生しないので、完治は無理です。

だから、俺は、名古屋城の四季の移ろいを楽しむように歩き、左足に油をさすようにウォーキングしています。

その結果、気さくな武将様や忍者に会えて、いま名古屋城を楽しんでいます。

そう、いま名古屋城に行けば、武将や忍者に会えるのです。

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