第11話 1週間導入研修 前日

 さて、内々定を貰って、それから卒業までずっと遊んでいた俺にとって、社会などくそくらえ状態であった。

 途中で内定者研修と題した集まりはあったものの、所詮はおままごと。

 叱る人事も居なければ、まだ入社を決めかねている同期達。

 俺にはこの会社しか内定がない(むしろ他を受けていない)ので背水の陣さながらの勢いで手を挙げる。発表する。褒めてもらえる。

 元気の良さと積極性が評判だった俺は、一躍目立っていた。なにこれ簡単じゃん。


 ぶっちゃけていうとその研修後の集まりで、配属先が北海道の函館と発表されるまでが俺の有頂天だった。

 俺は広島生まれの広島育ちだぞ?ずっと実家暮らしだったんだぞ?どうしろと?


 入社となる4月1日の前日。俺は泣いていた。

 両親との別れ、一人暮らしの不安、社会人になる事としての旅たち、仲間との別れ等、色々な感情が込み上げてきた。


 そんなちょろい涙など一気に吹き飛ばす地獄の7日間研修が始まるとは、まだ知る由もなかったのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る