無くした者達

 自分たちは教会の中を見て回る。協会の一番広い場所はやっぱり皆が祈りを捧げる場所だ。そこには雑魚寝で沢山の人達がいた。そして高い天井には紐が沢山張られてて、洗濯物が干してある。本当ならこんな生活感があふれる場所では無いだろうが、今は神聖感よりも生活感の方が強くなってる。流石に神の像には洗濯物、かかってないけどね。

 

 いくらここで生活してるからって、そこまで罰当たりな事しないようだ。皆神様に祈って無事を願ってるんだろうし、罰当りな事はしないよね。でもやっぱり皆さんの顔は暗い。目は下を向き、生気をなくしてる。結構な数の人が居るけど、そうとは思えない程に静かだ。もっとピリピリしてるのかと思ったけど、どうやらそんな時期は過ぎ去ったみたい。一体ここでの生活はどのくらいになるんだろう。

 

 一月とかは流石に行ってないと思うが。だってこんな事態に一月も前になってたら、流石に周囲にその事が知れ渡るだろう。国だって動き出す筈だ。けどそんな事はまだ無いって事は、多分まだ経ってても一週間位だろう。けどこれだけの人数が一週間……水は地下水があるらしいから大丈夫だろうけど、食料はどうなのだろう? 

 貯蓄してあったとしても、そろそろやばそうに思えるけど……

 

「誰も会話してないな……」


 皆がただ無言で過ごしてる。大人達はまだわかる。現状を把握して未来に悲観したらそうもなるだろう。けど一定する居る子供達まで互いに喋ろうともしないのは珍しい。子供はどんな時も無邪気だと思ってた。けどどうやら、ちゃんと自分たちの状況がわかってるみたいだ。あの子達が再び無邪気に笑えるようにしてあげたい所だ。

 

 けど……何をすればいいのか……この状況の原因は何なのか……それがわからないと動きようがない。自分は一旦、ドラゴたちの元へと戻る。すると丁度、洗礼を終えたシスターとメルルと鉢合わせた。

 

「どうだった……て、聞くまでもない……か」


 メルルの言葉に何も返せない。行く前に言われたとおりに成ってるからな。自分たちが与えられた倉庫の前には門番の様に武器を持った人が居座ってる。監視なんだろう。ブリン達は魔物だからね。

 

「話を聞かせて貰っていいですか?」

「分かりました」


 メルルがブリンとうさオークを回復してる間に自分たちはシスターから話を聞くことにした。シスターは床に膝を付いて祈りを捧げる様なポーズをすると、まずはじめにこういった。

 

「全ては私の責任なのです。至らぬ私の……神様……だからどうか連れて行くのは私だけにしてください」


 祈りを捧げる彼女服の間から何かが見えた。肌を固く覆ってる服を着てる訳だけど、手首のちょっと先くらいはみえたりする。しかも今は祈ってる。だから見えやすい。その腕には何かが書かれてる? 今の発言と良い……この人はまだまだ大丈夫そうに見えて、そうでも無いのかも知れない。何か責任を感じるようだし……そして祈りを捧げた後に、シスターはこうなる少し前の事を語り出した。

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