第52話 瘴気
薬の効果もこれでお墨付きになったことだし、この病が流行ってるのはここだけではないらしい情報があるから惜しまれつつも自分達はこの村を去った。そして更に進んで別の村々を巡る日々を過ごした。
「無くなってきたな」
「……うん」
瓶詰めにしてる薬も既に少なくなってきてる。でもそれだけ求められたということだ。巡った村々はメルルのこの薬のお陰で復調した。巡る度に感謝の念を述べられた物だ。
「……でも、少しおかしい気がする」
「おかしい?」
「うん……この病の発生源だよ」
発生源ね。どういうことかよく分からない。病なんてよく分からない物だって認識なんだが? だからそういうよく分からない物に効くのをよく作れるなーって認識。
「病気には原因がある。今回の病は昔からある病だよ。確かに定期的に発生したりはしてたけど、それだけに対策だってしっかりある……の。だからこんな一気に複数の村で広まるなんて……」
「考えられないって事か?」
自分の言葉に頷くメルル。その顔は真剣そのもの。学者気質だから気になったらとことん気になるんだろう。けどそんなメルルにウサギの前足がツンツンしてきてる。
「あの……アレッサちゃん」
「お姉ちゃん笑って」
そんな風に言ってアレッサちゃんが快活な笑顔を向けてる。けどアレッサちゃんの横には気持ち悪いうさオークの顔があるわけで……メルルも流石にソレを見て笑顔にはなれない。寧ろイラッとしてる。勿論アレッサちゃんにではない。うさオークにである。最初は興味もあって色々といじってたけど、いまは興味も失せてるようだから考え事をこの気持ち悪い顔に邪魔されるのが嫌なんだろう。
まあ邪魔してるのはアレッサちゃん何だけど……アレッサちゃんはただ純粋なだけだから怒るとかそんな事は出来ない。
「ごめんねアレッサちゃん。大事な話ししてるからブリンに遊んで貰ってて」
そうやってアレッサちゃんをブリンに押し付けるメルル。けど案外ブリンもアレッサちゃんの事気に入ってるから大丈夫だろう。アレッサちゃんはうさオークさえ可愛いと思える猛者だからね。ブリンにも怯えることはない。子供なんてこんなものなのかと思ってたけど、巡った村々ではうさオークは勿論、ブリンだって正体は隠してたけど、怯えられてたいた。
つまりはアレッサちゃんが凄く純粋なのだろう。どうせならこのまま純粋に育ってほしい物だ。そしてこの子がすくすくと安全に育って行けるかも自分達にかかってる。こんないつ死ぬかわからない世界から、もっと安全な世界に……
「この先に街があります。そこでも同じ病が流行ってるようですが、大丈夫でしょうか?」
商人のおじさんは心配気にそう聞いてくる。それはつまり薬がってことだよね。確かにそれは気になる。街となると今までの村とは規模が違うだろうし、今の薬の量では確かに不安だ。
「でも街なら協会だって……それこそ商店だって多いだろうし……なんとか出来ると思う」
確かにそうだな。メルルの実績ある薬の知識で新たにこの薬を作りませればなんとか。きっと備蓄とかあるだろうし。それさえも使い切ってたら不味いけど。そんな事を心配しながらも街が見えてきた。見えてきた……が……
「なに……あれ?」
メルルがそういうのも無理はない。だってあの街……明らかに紫の瘴気みたいなので満ちてる。今までで一番ヤバイ……それはきっと確実だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます