第47話 小芝居
「やあやあゴブリン共じゃないか!」
「ぶっ殺してやるぞ!」
そんな芝居がかった口調でゴブリン達の前に出る。だってこいつらこのままだと、明日くらいまで弾けてそうなんだもん。流石にそんな待ってられない。確かに騒ぎたくなる気持ちはわかるけどね。だって自分達よりも格上のオークに打ち勝ったんだ。宴やっちゃうのはしょうがない。そんな勝利の美酒に間を刺すのは心が痛むがしょうがない。
突然の人の襲来に、ゴブリン達は混乱する……と思いきや、奴等は今やイケイケ。速攻で武器を構えて、こちらを返り討ちにする気満々だ。
「なんか人肉で宴をもっと豪華にしよう……とかいう雰囲気に見えるんだが?」
奴等にとってはもしかして飛んで火に入る夏の虫? 的な? たった二人なのもまずかったかもしれない。かなり数を減らしたといえ、流石にこっちよりも数多いしな。全員で来られると困る。だがそこで王冠みたいなの被ったブリンが現れる。そして何やら周りのゴブリン達に言って武器を構える。ふむふむ、よしよし。どうやらブリンが一人で相手してくれるようだ。
これで戦いながらブリンをここから離す。身を隠してるメルルが周りのゴブリンの目を眩ませて、そのすきにね。けどそれにはある程度戦わないと行けない。それもここのゴブリン達にとって英雄となったブリンを追い詰めるくらいの戦いが必要。でもそれも匙加減が難しい。だって流石に危なくなると周りのゴブリンが参戦するかもしれない。
そうなると収集がつかなくなる。だからいい感じにやらないと……ゴブリン達が自分達では介入できないと思えるようなね。なかなかにハードルが高い。ゴブリン達は周りで音を鳴らして戦いを盛り上げてる。こいつらはブリンが負けるとかは全然考えてないようだ。それはそうか、だってゴブリン達にとっては英雄。そして勇者。そのブリンが負けるなんて考えはないだろう。
そうだよね。勇者ってそういう存在だよね。なんか悲しくなるな。
「がああああああああああ!!」
そんな分かりやすい雄叫びを上げて迫ってくるブリン。振られる剣を取り敢えず自身の剣で受けと――
「でぇ!?」
――めようとしたら押し切られて、剣が手から吹っ飛んだ。マジですか? ブリン本気すぎだろ。それとも今ので手加減した? いやいや、本気だったでしょ? これで手加減されててもちょっと惨めなんですけど。けどどうだろう? ブリンもなんか止まってる。それはもしかて「この程度で?」とかいう事? 違うと信じたい。
「なにやってんだ! さっさと武器拾え!」
そう言ってドラゴの奴が気を利かせてブリンに斬りかかる。そして始まる斬り合い。その隙きに自分は武器を拾おうとするんだけど……落ちてた剣がない!? とか思ってるとゴブリンの一人が抱きかかえてた。手出し無用だろうが! いや、ブリンがそう言ったかはしらないけど。取り敢えず自分の剣を抱いてる奴を睨む。するとそいつが剣を他のゴブリンへと投げた。
「こいつら!!」
そうやって剣を求めて周りのゴブリンに弄ばれる事に……そんな背後では激しい攻防が繰り広げられてる。案外ガチでやってないかあの二人。盛り上がりを見せてたゴブリン達は次第にその戦いに見入ってか静かになってた。けど自分の剣は奥の方のゴブリンに渡されてとれない。けどこのままじゃ、自分がいらない子に……それはちょっと真の勇者としてどうかと……そこで目についたのはゴブリンの腰に差してある短剣だ。
それを拝借して、二人の戦いに身を投じる。けどその時、周囲がまばゆい光で包まれる。ええーー!? ここでかメルル!? なにもやってないんですけど! けどゴブリン達がブリンを見失ってる今がチャンス!! 自分達はこの隙きに森の中に走っていった。
「まあ……計画通りだな!」
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