第39話 勇者となる
「ぐぎゃあああアアアアアアアアあああ!!」
汚い悲鳴が空に響く。砕けたのはオークの拳だったようだ。ブリンはそれを当然の様に拳についたゴミをフッと息で吹き飛ばすように仕草をした。拳を砕かれたオークは涙目になりながらも腰に携えてたデカイ棒を残った方の手で持つ。どうやら本気にさせたようだ。他のオーク共もブリンを潰そうとその武器を構えだす。デカイオークが五体も本気に……流石にちょっと不味いんではなかろうか?
ゴブリン達はすっごく調子に乗ってるが、ブリンでもこの人数差はどうなのか? ちょっと自分達でもわからない。ブリンのやつも他のゴブリンに比べれば大きくて屈強だ。けどオーク程じゃない。だから離れてみると絶賛ピンチ中に見える。ブリンは街で買ってやった剣を抜く。自分と同じそこらで売ってる普通の剣だ。けど何故だろうか……ブリンが本気出して持つとなにか業物に見える。
そして実際、オークが適当に振るうデカイ木をスパッとブリンは切り裂いた。それがこっちに転がってきたから更にびっくり。気づかれないように避けるのが大変だった。けど止まった木の断面を見てそして自分の剣を交互に見て思う。
「自分の剣でも同じように出来るのかこれ?」
だって同じ所で買ったんだよ。それならこれだけの切れ味が自分の剣にもあるって事ではなかろうか? そう思ってるとドラゴの奴が余計なことを言う。
「お前が同じことしたら剣の方が折れるぞ」
「煩い。知ってるよ」
自分だってそうなるなーくらいわかる。どうやらブリンの奴は触れた物を強化できる? みたいな。多分それで剣を強化したんだろう。そうでなかったらこんな太い木をただの鉄製の剣でスパッと切れるわけない。戦いのほうへ目を向けるとブリンがオーク共に善戦してた。けど流石に楽そうではない。流石に数的に不利だしな。拳を砕いたオークは動かなくなってるから残りは四体。
けどその四体はオークにしては連携をとってるようでブリンを囲むようにして攻め立ててる。前を見てると横からの攻撃が来たりしてブリンは攻めきれないようだ。けどここで自分達が出るわけにも……
「メルル魔法でどうにか出来ないか?」
「やってみる」
そう言ってメルルは魔法の詠唱に入る。ブリンは右側のオークに向かってる。けどその後ろからオークの棒が迫ってる。だが後方のオークの攻撃が何かに阻まれる。どうやらメルルの魔法が発動したようだ。そしてそれを理解したのかブリンは一気に踏み込んでオークの首を素早く飛ばす。これで二体目。それからはメルルの補助も入ってなんとか数を減らしていくブリン。
残り一体となった所でオークは逃げていった。ボロボロのブリン……けどその勇姿にゴブリン達は一斉に湧き上がる。まさに勇者が降臨したような光景。自分はなんか複雑だった。
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