第36話 病と怪我と

「なんなんですかあれ?」


 自分はデルロンにのって去っていった商人の事をおじさんに尋ねる。まさに金だけある嫌な奴という感じありありなやつだった。その証拠に周りにいる商人の人達も奴が去っていってから口々に文句をたれてる。

 

「あれはランドラ商会なんですよ。王家にも繋がりがある大商会で、私達みたいなちいさな商会とは比べるのもおこがましい存在ですな」

「へえーなんか嫌われてるようですけど」

「はは、まあ悪い噂も絶えない商会ですからね」


 そんな会話をしてるとドラゴの奴がわってはいってきた。そういやこいつも貴族だったな。

 

「ランドル商会はかなりアコギな事やってるってのは有名だからな。さっきの荷物も強引に別の商人から買い叩いたんじゃないのか?」

「その通りのようですな……」


 おじさんの視線の先には人だかりができてる。少し足を向けると何かすすり泣く声と周りを囲んでる人たちからは怒りの声も聞こえる。

 

「あれは絶対に必要だったのに……待ってる人達がたくさんいるのにあいつ……貴族が欲しがってるって理由で無理矢理!」


 四・五人の商人の訴えはだいたいそんな感じだ。どれも強引な形でもってた商品を持ってかれたと……しかもそれはどれも大事な……いや、商人にとって商品が大事なのは当たり前だろう。けど、可及的速やかに必要な物だったみたいでその嘆きはけっこう悲惨。話を聞いてるとどこぞの村とかでは流行病が流行ってるとか。別の村では魔物の侵攻で怪我人が大挙してるとか……病気や病を癒す薬草とかを頑張って仕入れたのにそれを根こそぎ……しかも貴族なんていつ使うかもわからないのに念のためなんて理由で買い占めてるらしい。

 今すぐに必要な人が居るのにだ。だからこそ商人たちは泣いてる。

 

「ここには沢山の商人が居ますよね? その人達のを持ち寄れば……」

「それは無理ですよ。彼等が集めたのがそれこそ方貌から集めたものだったみたいです。それに今から集めたのではどうやっても間に合いません」

「確かに……そうですよね」


 どうしようもないって事か。自分はメルルを見る。

 

「メルル……」

「無理……どのくらい怪我人がいるかも……病気もどんなのかもわからないのに……無責任な事言えない。魔法は……万能じゃない」


 言わずとしたことを先読みされて拒否られた。でもメルルの言ってることは正しいよな。魔法でなんだって解決できるわけない。どうにかしたいという思いはあるけど、どうにも出来ないという思うもある。勇者だからって何だって助けないといけない義理はない。気にはなるけど、話を聞いただけじゃ実感とかはできないしな。

 

「ちなみにその村とかにも寄るんですか?」

「そうですね。いくつかは寄ることになるでしょう」


 それを聞くとやっぱり困る。けど既に必要だった薬草とかはあの大商会が持ってったわけで……あの商会に馬では追いつけなさそうでもある。王都のほうへ向かっていったし、自分達とは正反対。奴等から奪い返す……という選択肢はないと見た方がいい。

 

「薬草の群生地がどこかに……」

「そんな都合の良い事ないだろ」


 自分の言葉にドラゴの奴がかぶせてきた。わかってる。わかってるけど、考えるくらいいいだろ。そう思ってるとブリンの奴がこういった。

 

「どうぼうだちなら人がじらないやくぞうの場所、じってるがもじれない」

「それだ!」


 思わぬところから希望が見えてきた。問題は沢山有るだろうけど、とりあえずブリンにまかせてその地方のゴブリンに接触をしてみよう。

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