第22話 どうして?
「へ?」
そんな声を出しちゃうくらいには混乱してた。一体何が起こったのたか? 自分にはちょっと理解できない。あのゴブリンと会話した。それには驚いたけど、色々とおかしなゴブリンだったから受け入れる事はできた。けどなぜか今は盛大に笑われてる。そんなおかしな事を言ったかな? ゴブリンの笑いのツボはわからん。その時、茂みから顔を出すドラゴが見えた。
どうやら自分を追ってきたようだ。肩で息をしてる所を見るに必死に探してたようだ。ありがたい。でもドラゴもこの状況でどうしていいかわからないという感じ。今ならあのゴブリンに攻撃を当てれる……けどってな感じ? 自分は頭を振って「やめとけ」と伝える。多分このゴブリンにはもう戦う気がない。なんとなくそう思う。
まだ殺されてないしな。実際頭を叩きつけられたときは三途の川がみえたけど……こうやって自分はまだ生きてる。確実にこのゴブリンに生かされたんだとわかる。だってそうじゃないと自分が生きてる訳ない。何もなかった自分が……な。それは流石に無理ってものだ。あのゴブリンには強がったこといったけど、流石に無理かなーて思ってた。
「なあ、殺さないでいいのか?」
まだ頭はガンガンするけど、少しは回復してきた。それなのにこんなこと聞くのはおかしいかもしれないけど、なんとなく確かめたかった。
「ぎょうみなくなった。おまえばばがだからな」
「ああ?」
ゴブリンに馬鹿言われました。一体どこで自分を馬鹿認定したのか謎だ。そんなに馬鹿を晒したかな? ちらりとドラゴの方を見ると、言葉を喋ったゴブリンに驚愕してる。確かに普通に会話してたけど、びっくりだよな。魔物が人の言葉を喋るなんてな。しかもただのゴブリンが……だ。ドラゴンとか高位の魔物は言葉を操ったりするとか言われてるけど、ゴブリンは聞いたこと無い。
「許すのか? 自分たちを?」
「ぞんなのわからない。ただ、おばえばころさない」
「それは……助かるよ」
本当にね。やっぱりドラゴはでてこない方がいい。あいつはメルルの魔法でこのゴブリンには騎士に見えてる。今は正気を取り戻した感じのこのゴブリンも恨みの元凶とも言える騎士を見るとどうなるか分からないだろう。とか思ってたけど、ゴブリンは気付いてた。
「そごのやづ、でてこないとごろす」
「いやーそいつも敵じゃないとおもうよ?」
そんなフォローしたけど、駄目みたい。ゴブリンは再度出てこいと言う。これ以上焦らすと攻撃してきそうだったから、ドラゴに頷いて出てきてもらう。ハラハラドキドキだ。けど、ゴブリンは結構冷静だった。
「騎士だぞ? 大丈夫か?」
「ふん、あればぎしじゃない。もうまどわされない。おればながのまそをとどのえた」
なんと、どうやらこのゴブリン、自身でメルルの幻術を解いたようだ。何度驚かせれば気が済むのこいつ? でも暴れないでくれたのはありがたい。
「ながまか?」
「ああ、友達だよ」
「どもだぢ?」
よくわからないという反応のゴブリン。友達という感覚はゴブリンにはないのだろうか? まだまだ警戒してるドラゴはそれでも剣を収めて自分に肩を貸してくれる。そしてゴブリンに対して聞いた。
「お前は……どうするんだ?」
「けじめはつげる」
直ぐにそう返したゴブリン。つまりは本物の方の騎士に挑むつもりか。でも……
「よし、なら自分たちと一緒に来たほうがいいな」
「おい!」
何言ってんだこいつ? 的な声を出すドラゴ。でもしょうがないじゃないか。だって既に騎士にはスーパーゴブリンけしかけてる。色々と複雑になっちゃってるんだ。それに一人で行かせてもなにも解決にならない気がする。
「おばえはほんとうにばがだ」
そういったゴブリンだったけど、一緒に行くことは了承してくれた。そしてメルル達の所に戻るとまたまた「馬鹿だ。馬鹿だ」と言われるはめになった。どうやら自分は馬鹿らしい。悲しいことに。
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