さよなら、海鳴りの島、父のいた学び舎

作者 馳月基矢

秘めてこそ美しい情感に胸を打たれる

  • ★★★ Excellent!!!

抑えに抑えた文体の中に、それでも溢れてくる思い出が散りばめられ、砂の中の宝石のように美しい。

無粋を承知で一例を挙げれば、『父が運転する潮で錆さびたワゴン車』にある、“潮で錆びた”の一言が、単なる描写や説明を越えた「思い出」として一文を輝かせている。

そして幕切れ。それまでの抑えていた文体からの切り返しの鮮やかさ、心地よさ、解放感。そして郷愁。

なんともうらやましい。このような“故郷”があることを、心底うらやましいと思わされる。そんな秀作エッセイ。

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