第45話ハルドゥーンの懸念

シャルルたちの一行を乗せた船は、途中様々な小港で休みながら、順調に進んでいる。

心配をしていた、食い詰めた海賊による急襲もない。

もっとも、天候自体が、快晴が続くのだから、海賊たちもうかつには、その船をうかつには見せられない。

小舟の大船に対する急襲は、その存在を把握されてしまえば、全く不可能に近くなるのである。


「まあ、今のところはいいが」

ハルドゥーンは、それでも警戒を怠らない。

「ああ、そうさ、こうやって小港で立ち寄り、歓待を受ければ、ますますシャルル様の人柄があちこちに拡散する」

ペトルスの口からは「シャルル様」が定着してしまった。

満足げな顔をして、シャルルをほめたたえている。


「ただな、」

ハルドゥーンは、いつもの含みがある様子。

「こうやって、あちこち、それほど深く付き合うわけでもないが」


「ん?」

ペトルスが聞き返す。


「シャルル様の旅行上の場所が特定されやすいのさ」

「人の口は、扉をつけられない」

「狙うとならば、夜陰に乗じて港なのかもしれん」

ハルドゥーンが応える。


「となると・・・」

「夜陰に乗じて海から港へか?」

ペトルスはここで唸った。

ありえないことではないからである。

確かに、自分自身がかつて、食い詰めていた時代は、そんなことをしたこともある。

しかし、まさか自分が「狙われる立場」になるとは考えていなかった。


「まあ、とにかく寝ずの番」

「警戒は、怠らずさ」

「何しろ、小舟程度の海賊相手なら、陸にいたところで負けることはない」

ペトルスはここで胸を張る。

しかし、ハルドゥーンの顔は、厳しいままである。


「小舟であってもな、集結すれば、負ける」

「問題は、その集結の度合いなんだ」

「何艘で来るのか、装備は・・・予想できるか・・・」

「親玉は誰か」

「そういう情報を集めなければならない」

ハルドゥーンは、漆黒の海を見つめている。

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