記録―Setting materials―

人と機獣の記録―in Parasite Octopus―

汚れた国に残された記録


【記録に現れる主要人物】

●トルス・ノウ……だった物。二百年前にこの国で住んでいた若き医者。水質調査をするなど珍しい趣味を持っており、これも全て自身の中にある好奇心ゆえである。朝にストレッチをする癖があり、人当たりも良い。

が、二百年前の黒蛸コクショウの登場により、誰よりも水に近かった彼は寄生されてしまう(この際、両親は暴動の末に殺されてしまっている。眷属=現存する国民として認識するトルスにとって、彼らは死んだ者の扱いである)眷属と成り果てた彼は、虚飾の世界で人間として生活をする。終わらない今日を、何度も回りつづける。

二百年後。何がキッカケなのか、水を長時間飲まないという状態になり、寄生体を摂取する事により現実から逃避していた世界から解き放たれ始める。彼は元人間であるため、彩られた虚飾とモノクロの現実に悩まされる。しかし刻まれた行動に沿って、疑惑を感じつつも行動。しかし感情が爆発し、源流を岩で塞き止める。これを愚かと捉えるか、それとも賢明と判断するか――

真実を知り、汚染され始める正気。人間の意識を振り絞り、最後に人の文字で、自分のこれまでの経緯をボロボロの日記帳に書き殴る。少なくとも、人ですらなくなったトルス・ノウという人格は、確かに二百年後の旅人の記憶に残った。


●お婆ちゃん……だった物。二百年前に元気に散歩をしていた。しかしやはり歳であったのか劣化は激しく、刻まれた行動をとるだけとなっていた(透明の会話を、彼女はずっと繰り返しているつもりである)水を欲したのは、過剰に栄養を得るためであり、結果的に更に寄生は強まったと言ってもいい。

なお、彼女が発していた意味不明な言葉の羅列に出てくる単語は、何かしらの山か川だと認識はできるが、この世界には現存しないものである。少なくとも、二百年前であってもそれらの山、川は存在しない。




●リシティ・アート……頭が良く、真面目な14歳くらいの少年。ボサボサな白髪に赤い瞳を持つ。

汚れた国の凄惨な光景を見て、エメを気遣う一面が見られる。また、自分よりも巨大な黒蛸コクショウに対し生身でも怯える事無く相対する肝の強さを見せた。偶然見つけた、何かの行動を残そうとした人間・・の記録に心を打たれて、彼を勇者であったと讃える。

一方で、黒蛸への同情、彼の境遇への妄想など精神が不安定になっていた。トルスの記述もあり黒蛸を破壊する事を選んだが、ある意味では一つの共存の可能性と思っていたようだ。しかし、やる時はやるようで怒りをぶつけた……が、それを見ていられなくなったのか、エメに諭されて一人嘆いた。

碧狼のパイロットであり、相棒であるエメと荒廃した世界を旅をしている。エメを大事に想うあまりに過剰に護ろうとする悪癖があり、エメの感情を否定しかけている。エメの感情を理解こそしているが、今のリシティには彼女の告白を受けられるほどの余裕はなかった。


●エメ……碧狼の中にいた女の子。深緑の髪を持ち、新緑の瞳を有する。耳が頭にあり、尻尾もある。10歳くらい。幼いが一方で慈しみ深い一面を持つ。れっきとした人間。

リシティによって最初こそ碧狼の操縦はしていなかったが、リシティの異常に気付いて強引に接続。その本心は、ただリシティと一緒にありたいと言う単純な願いであった。

碧狼のパイロットであり、相棒であるリシティと荒廃した世界を旅をしている。碧狼と繋がっていると少し大人っぽくなるため、この国では基本的にこちらの人格であった。



【記録に現れるMエムHエチMエム

●CW-07 碧狼ヘキロウ

碧色の装甲で狼人間のような姿の機人獣。全長、10.8メートルほど。全身にスラスターを持つ。

獣のような鋭いツインアイを持ち、首と頭に繋がる毛(電光放出貯蔵体)を持つ。今回はリシティの感情の高ぶりもあってか、全身から電撃をチラつかせていた。

武器は両腕のトライトンファー。そこから放たれる光の爪は、熱量を有した光を硬質化した物で威力は高い。それの出力を高めたのが光の剣であり、熱量は増し切断力が向上する。

貯蔵された電光エネルギーを腕へと伝達させ、接している物に電撃を送り込む事も可能。対機械においての切り札である。内部機械に大打撃を与えるため、必殺攻撃とも言える。

搭乗主マスターはリシティ・アート。またはエメ。通常時はエメが胸部にて主要で操縦するが、戦闘時は下腹部のリシティが主要となって二人で操縦する。だが、リシティ一人が操縦できないわけではない。あくまで適材適所。リシティの時は瞳が赤になり、エメの時は緑に、碧狼の時は青くなる。

リシティの声に応じて登場したが、これはエメの意志ではなく碧狼の意志である。


●iaiaia888 黒蛸コクショウ

黒い柔軟な装甲に覆われた蛸の姿をした機人獣。10.2メートルほど(眷属は4.7メートルほど)。国の中心である廃公園で二百年もの間、国の王をしていた。

タコの特徴を受け継いでおり、触腕は八本となっている。やり方次第では風景に擬態もできるが、今回は焦っていたためか行わなかった。寄生体を水の中で伝播させられる能力を有する。寄生体に寄生された人間は、その肉体を黒蛸に酷似した姿に替えられて、自分の中の最後の日の記憶を繰り返すようになる。これにより二百年前の国を侵略、最終的に自分を王とした。

とても知能が高く、人を喰わずに知能を得た稀有な努力家。眷属となった元人間の知識を忍ばせた寄生体から会得していたと思われる。彼自身の知能は人間の言葉を発する事できるまで発達しており、感情も幾つかは会得していたと思われる。だが、一方で論理的な部分と、同じような相手なら味方になってくれると言う環境ゆえの考え方から、怒りと言う感情はよく解っていなかったようだ。

なお、遺伝子の本能には対抗できなかったようで、結局、国の外へ出ると言う行動はとる事はできなかった。自問自答を繰り返す事によって、自己の本能を正当化していた可能性がある。

戦闘能力はさして高くはなく、眷属を使役する事によって足止め程度にはどうにかできるが、本体は弱い。装甲も脆弱である。これは彼がそのような戦闘などせずに国を得たゆえである。メッキの王様は、中身も伴っていなかった。

人を(無意識とは言え)自分の操り人形とした事は人間からすれば悪行に映るが、一方である意味では機人獣と人間の共存とも言えなくはない。勿論、許されない行為でこそあるが、リシティからすればそれは共存の一つの在り方に見えた。

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