第1ー8 第4.6根源種

「私達は劣化した人種で、白人様の為に働けって事ね?で、兄はどこよ?馬鹿馬鹿しい、いい年になって何がオカルトよ!妄想もあなたの頭の中だけにしてよね!」

「それは無理です。罪を犯しても無問題とはなりません。状況はそんなに甘くないですよ」

「だから兄の罪は何なのよ!はっきり言いなさいよ!」

憤る自分を尻目に、困った表情するスーフィーは口を閉ざした。

言葉を選んでいるのか?それとも何か思惑があるのか?

はっきりしない態度が、余計に腹立たしい。

目がつり上がっていく自分を目尻で捉えると、ルーペ形眼鏡を指で押し上げ、ボソリと言った。

「…そ、それにこの事は、あなたのご両親がご存知だと思いますけど?」

「?…え…両親って」

「…ま、ともかく、お兄さんはこのままては危険とも言えます。桐子さんにもご協力頂いて、この状況を打開しようじゃありませんかぁ♬」

両手を大きく広げ、深妙な面持ちから一転し笑顔に切り替わった。

きっとスーフィーなりに気を使っているように思えるが、胸がムカムカしてくる。

(どうしてここに両親が出てくるのよ。ママは兄を助けたいと、願っていただけじゃないって事?他にも事情があるの?パパもただ、兄と喧嘩しただけじゃないの?そもそも、どうしてこのピンクウサギが、そんな事知ってるのよ)

あの時、ママの態度に釈然としなかったのは、ここに秘密があったからか?

(私…いつも家族と思って…、どこまで真実で、どこまでが嘘で…、演技も入ってるんかなぁ?な〜んかやる気もなくなったなぁ)

スーフィーの言葉に動揺が隠せなかった。

頭に『不安』という文字で膨れ上がる。

一気に気が抜けて、立ち上がる元気さえも起きず、ボーッと前を見つめた。

やっと出た言葉は直感的で、自分らしくない卑屈な言葉だった。

「第5…根源種?とやらのスーフィー様が、劣化した人種に何をさせる気?ご自分達でされたらいかがです?その方が効率良いでしょ?」

「そ、そんな言い方しないで下さいよ、何度も申し上げた通り、こんなの単なる総称ですよ。第4にはアトランティスも含まれますから、範囲は広大ですよ。それにこれは、全て第5へ移行させる為にも、第4.6根源種の存在が必要不可欠なんです」

「それ、どういう事?」

「人は何処から来て、何処へ行くべきなのか?人類が常に思考し続けてきた問題の一つでもあります。そこで我々は考えました。人に限らず全てが第5へと移行し、そして未だ不確定要素の高い、第6.第7根源種へも移行出来たら、人が本来在るべき姿よりも種の入れ替えでの進化や、未知なる存在にもなりえてる!人間と世界の起源を探り、発見し、分析吟味する事で、全ての目的と起源についての説明がつくのですよ!」

(こいつ、完璧オタクの発想じゃね?価値観共有とか、分かち合うとか、そんな日は半永久的に来ない気がする…)

熱弁されると、更に熱が冷めていく。

はぁーと息を吐いて言った。

「…話が大きくなり過ぎて、意味わかんない。やっぱり白人様がされた方が良さげじゃ?」

「それが出来るのは、第4.6根源種の方のみです。恥ずかしながら、第5根源種は観察・分析のみです、あ、後説明ですね。それに第5根源種が白人ばかりとは限りません」

「ふーん、兄もその4.6の1人って事?」

「はい。根源種は源の原則系統の分類であり、地域や肌の色は特に関係はありません。系統ですから、比較的に同郷者と酷似、類似とかはあり得ますけど」

「じゃ、一つの場所でも、色んな系統の人達が混在しているって事ね?」

「そうですね。第1・第5根源種はアストラル体を扱うのが主に対して、エーテル体を駆使する種が第4.6根源種です。これは最近の発見であり、どれにも属さないので、ぼ、僕がそう命名しました!」

エヘン!と、鼻高々に誇り高げな感じが子供っぽい。

難しい言葉を羅列すると思えば、この子供ぽさが垣間見て、クスっと笑えるようになった。

スーフィーは更に話を続けた。

お茶を再び注ぎ、新たなティースタンドを追加して。

(アルトラルとか意味不明だけど、フルーツ盛りは最高だな。紅茶も本当に美味しい。他が飲めなくなりそう)

モグモグ頬張る事で、力を癒す事にした。

色々思う事がある。

どうして4.6という数字なのか?

名前の何処にも『ス』が入ってないのに、スーフィーっていうのか?

でも一番は両親だ。

両親とスーフィーとの関係は?

言い出したらキリがなかった。

細かい事は後々聞くとして、早く話を進めろとスーフィーに催促した。

「第4.6根源種を見つけるのは、容易ではありません。アストラル体は大型攻撃は得意ですが、細かさが残念過ぎる程ありません。ですが第4.6根源種の方のエーテル体放出範囲は、確かに狭いですが、高密度で飛距離もあり、ゲリラ戦・索敵等には非常に適しており、第4.6根源種は大活躍出来る存在なんです!」

「攻撃に活躍って…穏やかじゃないのね、戦争でもやるつもり?」

スーフィーの言葉で、ヤスナの事が当然、頭に過ぎった。

あれからどうしただろうと…。

(人に武器なんて向けたくもないのに、話がどうしてもそっちばかりに行くんだ…。もう二度とあんな事したくないし、されたくもない)

これまでヤスナの無事を願わない日は、一度もなかった。

そんな思いと自分の意志とは関係なく、話だけが拡散し進行する中、スーフィーの発言にまた言葉を無くす。

「桐子さんの世界だって、いつも戦争があるじゃないですか?要は自分に関係あるかないかで、人間の関心度は大きく変わるのでは?」

「…!」

(正論すぎる、言い返せない。今の幸せも一時と考えたら、危機感持つのは悪い事じゃない。でも、それでも対岸の火事であると思いたい)

苦虫潰した表情の自分に同情したのか?

スーフィーは話の目線を変えて喋り始めた。

自分も気持ちを切り替えて、聞くに集中した。

今の自分には、スーフィーの言葉がどれほど有難いか?ちゃんと分かっているつもりだ。

「第4.6根源種の発掘目安として、まずはオカルトや目に見えない存在らを、本当に信じるかどうか?この判定者がラッシャンです。ラッシャンが見込みありとした者は、本当の第4.6根源種適応者か?テストします。お兄さんはその途中で…まぁ期待も大きかったですが。久方ぶりの出現で、しかも…。お、お兄さん、ご健在ですよ」

「スーフィー、兄は本当に帰られないの?一時的にも?声だけでも聞かせてあけられない?心配してるの、特にママ…」

「…桐子さん、お優しいんですね。でもそれは不可能で 無理なんです」

「どうして?」

「知りたいと…例え初めは興味半分で関わったとしても、その欲望にはリスクがあると、彼は考えなかった。知りたいなら、その対価を支払うべきです。だからこそ、情報には価値があります。こちらも何度も確認しましたが、彼は知りたいだけが先行した。本来ならその要素も資格も人一倍あったのに…」

「…」

(知りたい欲求の暴走…これは奴らしいかもしれない。何となく分かる気がする。無責任なところも良く分かる。迷惑かけてる自覚も無しだし…意外とマトモなんだな、スーフィーは)

自然と下に目が行くと、すぐスーフィーが声をかけてきた。

スーフィーなりの気遣いだろう。

初めの意味ない、長台詞の時とはえらく印象が変わり、微笑ましくも思えるスーフィーを、いつの間にか受け入れていたようだ。

「落ち込んでいないし、スーフィーも気を遣わないで。あなたの内容に納得したまでの事。罪の重さの判断はともかく、責任取れないのに、軽はずみな行動をしたんだと理解したわ」

「ハハッ、す、すみません。うまく言えなくて…」

まだ分からない事が多くても、兄1人が被害者ではない事だけは、見えてきた気がした。

大きな図体がオロオロするのも、ギャップで可愛いとさえ思えて、気持ちに余裕が出てきた。

何となく分かってきた事もあるからだろう。

スーフィーが自分に何をさせるかは、まだ知る由もなかったが…

「でも、ぼ、僕は本当に桐子さんに期待してるんですよ!」

「き、期待?どして?」

「それはだって…。そ、そ、女性であってもブレない精神力に家族への思いの深さ。そして異空間でも動じない意志の強さ!これこそ第4.6根源種の資質だと思いました!ぼ、僕と一緒に世界を救い、より良く変えていきましょう!」

「だ、だから面倒は嫌なんだって!それに今聞いたばかりで、何すればいいかも分かってないのに、やれ!はないでしょ?私は世界より家族が揃ってくれたらいいのよ」

「でも、今みんな進化しないと、全員ルーピーズにやられちゃいますよ…」

「る、ルーピー?何よ、それ?」

(また次から次へと新しい単語が続く。前に聞きたかった単語を忘れるくらい多いよ…)

ドガドガと勇んで自分に駆け寄り、固く両手を握り締め、目を潤ませて力説していたスーフィーは、急に肩を落とし拗ねたように言った。

会話があちこちに飛び、どう収拾つけていいか見当もつかない。

話は思わぬ方向へと進んでいった。

「世界は7つまで確認されています。ま、これも第7第6根源種同様、一部伝説化されていますが。この部屋は、それらの世界に繋がる為の中継地であり、4.6アイコンはここへ来る為のトリガーです。ここを通して、あなたには7つの世界から、沢山の本を回収して貰いたい。ですが、それらを必要としているのは、ぼ、僕達だけじゃありません。その筆頭格が第7根源種の通称『ルーピーズ』です」

「パソコンには、1〜7までアイコンがあったけど、どれま繋がらなかったわ。それとその本とやらを回収してどうするの?数も多いの?何だかRPGのゲームみたいね」

「多分アイコンとか、一括ダウンロードされたのでしょ。適応種番号でないとアイコンは反応しません。本の場所はある程度は分かりますが、そこから先はゲリラ的捜索が不可欠です。本が第6第7へ移行する為に必要なアイテムで、希少価値が高い程、中身も高くなります。感覚的にゲームでも問題ないかと」

「兄も私も4.6とやらだから、4.6に反応したと…ゲリラ的って、戦闘もアリ?って事ね」

(ヤスナもこれをやってるのかな?簡単に言ってくれるわ。本当に死んでたよ、あれは…)

「…ルーピーズは第7世界の都市5つを一瞬で崩壊させ、数百という希少本を手に入れたきり、新情報はありません。これも結構前の噂ですが、あなたのような人が出てきたら、今は鎮静化している彼等も、活動活発化させるのでは?と、ぼ、僕は考えています」

「バンッ!」

「…ち、ちょっと、待ってよ!一瞬でそんな事やっちゃう輩と対峙しろと?無茶振り過ぎでしょ?そもそも、一般学生に世界を託す事自体、恐ろしくないの?寝た子をわざわざ起こす必要もないでしょ?それにエーテルとか言われても、使ってる自覚無いし、やり方も何も…人は絶対に殺せないわ…」

(これは話がデカ過ぎでしょ。漫画じゃないのよ、冗談じゃない!こんなのこっちからお断り、当然拒否だ!)

両手でテーブルを思いきり叩き、立ち上がってスーフィーに抗議した。

目の前で人が血を流す感覚…助けられなかった無力感は、筆舌し難い思いで悶絶してしまいそうだった。

「…そうですか…、致し方ありません。本意ではありませんが、急遽予定変更で、あなたのご両親に代理をお願いしましょう」

「え?どうして両親を?これと何の関係あるのよ?ひ、卑怯じゃない!」

「いえ、卑怯でも何でもなく、この世にあのお兄さんを、産み落とす選択されたのはご両親です。ご両親は4.6ではないですが、素養はありそうですから、一時的に4.6にするくらい、ぼ、僕なら出来ますから」

突如ギョッとする、冷たい眼差しに変貌したスーフィー。

突然、見つめられた自分は、氷結してしまったかのような悪寒が背筋を走った。

その目が「言った事は嘘でない!」と、瞬間に悟った。

(こ、こいつマジだ…ヤバイっ!)

高圧的態度を一変させ、スーフィーの言葉を撤回させようとしても、後の祭りのようだった。

兄にやらせればいいとか、何度も謝罪の言葉を言っても、スーフィーは「ノー」としか言わなかった。

それでも自分がやる…とは言い切れなかった。

「いいですか?あなたがいるから、お兄さんは健在と言っても過言ではない。あなたが来ると言うから、第5根源種の、ぼ、僕がわざわざここにいるんです。その予定調和も根底から覆すなら、ぼ、僕は全力で元の鞘に戻してみせます。これは血統の問題でもある、そもそも…」

「…?」

「ま、あなたが無理なら、この子を望んだ両親に責任取らせるのは当然です。お二人共、未成年ですしね…自己蘇生可能の自爆弾とかなら、投下するだけですし、こちらの手もそんなに掛かりません」

「ち、ちょっと待ってよ…ママを爆弾にするとか、やめてよ、お願いします。謝るから、両親にはされないでよ!兄にさせればいいじゃない、元凶はあいつでしょ?」

ヘナヘナと力が抜け、思わずその場に座り込んでしまった。

(そんなの屁理屈じゃないか!ママを兵器にするとか、恐ろし過ぎて想像も出来ない!ママは怖がりで虫も殺せないのよ!あいつのせいで、家族がどんどんおかしくなっていく。兄貴をどうにかしたら、こんな事必要無いんじゃ…)

「冗談よね?スーフィー。人を爆弾とから、怖い事言って…、パパも仕事で忙しくしてるの。お願いだから、邪魔しないで」

「(^_^)」

「…!」

(目が笑ってない、本気だ…どうしてこうなった?何が原因かも分からないよぉ、誰か助けてッ!怖いッ)

スーフィーの表情で、全てを悟った気がした。

勝手に涙が出てくる。

分かり過ぎている悔しさと、腹立たしさと無念さ…。

助けを懇願しても誰も来る事もない。

自分の無力さと力の限界を、こんなところで改めて確認させられるとは…。

色んな感情が込み上げてきても、言葉にならなかった。

ただただ肩を震わせ、泣くしか出来なかった。

毛足の長い絨毯に横たわり、嗚咽を殺して泣いていると、スーフィーが屈んで肩に手を置き、耳元で囁くように語りかけてくる。

「本当に優しいですね、桐子さん。あなたが「ウン」と言えば、全て問題解決です。ぼ、僕は期待してるんです、あなたに。でも、あなたが男ならもっと期待しましたよ。だから桐子さん、結果を出して、それを証明して下さい。罪の女より、一番の罪深き者は、あなたかも知れませんね」

「わ、私が、罪深き?何故、どういう事?」

顔を上げてスーフィーを見ても、ニヤリと口元歪めるだけだった。

立ち上がり、自分を見下すように言い捨てた。

「ご両親はご周知ですよ。でもお話されるかは存じません。桐子さんも覚えていたら、尋ねられると良いですよ。知識欲・好奇心大いに結構です!しかし、それには覚悟と対価が必要です。世の中、知らなくてもいい事もあります。その為の血統でもあるんですから」

先ほどの愛らしさ等露程にもなく、ニヒルな口元見せつけるスーフィー。

正に見下されていた。

(予め決まっている事だったんだ。敢えて兄や両親は、自分にやらせようと煽っただけで…みんなして酷い…、一体家族って何なんだろ?自分だけ仲間外れみたいで嫌だ)

複雑極まりない心中に、吐き気さえ催しそうだった。

出来るだけ感情的にならず、冷静に努めようと自分に言い聞かせていた。

「初めから決まっていた事みたいだし、私に選択の余地はないんでしょ?なら決まりだよね?兄なんて使わず、最初から直接、私に言えばいい事なのに、どうしてこんな回りくどい事を…」

「それは出来ません。オカルト等にほぼ興味のない桐子さんが、ラッシャンと会話はするなんて思いません。それに、ぼ、僕は、彼にもやって貰いたかったんです、ま、血統もね…それに一応は男性ですし…。でも無理でしたが」

人を本気で殴りたい!って、初めて思った瞬間だった。

己の理性で、拳の怒りを鎮めさせた。

「白人至上主義の次は、女性蔑視ですか?これも区別って詭弁ですか?」

「いえいえ、そんなつもりではありません。ぼ、僕の言っている事は、そんな陳腐且つ単純ではありません。これは後々充分なお時間で論議しましょう」

(いけしゃあしゃあとよくも、この憎々しい減らず口叩く、ピンクウサギをギャフンと言わせてやりたい…けど、今は何も出来ないのが本当に悔しいッ‼︎)

煽るように人の気を逆なでるやり口に、ワナワナと体が震えてくる。

今ならスーフィーの要望通り、目の前の対象に、何でもやれそうな気がしてならなかった。

「そんなに怒らないで下さい、桐子さん。ぼ、僕はね、あなたと友好でいたいんです。その為には隠し事はいけないと思っています。正直にお話もしています。この対処は、あなたに必要であると判断したからであり、隠す意図は毛頭ありません。それに、対象は対人ばかりとは限りません。動物もメカもいて様々です。でも倒したら、鮮血は出るでしょうが」

「…そう、それはいい情報ね。応じた甲斐があったって事かな?」

やっと立ち上がれると、椅子に深々腰掛けて言った。

(こういう時スパーっと、大人みたいにタバコとか吸って見せると様になるのかなぁ。やっぱ、現実身がなくて、他人事のように思えてならない。真っ只中の当事者なのに)

「そんな冷たい言い方…でも、ぼ、僕は謝らないです。本当の事ですから」

「謝って欲しいなんて、これっぽっちも思ってない。恩売られる方が、気持ち悪いから」

斜交いに見たスーフィーは、先ほどとは打って変わり、自分に対して申し訳なさそうに、肩身を狭くして立ち尽くしていた。

抑揚も無く淡々と喋るやり方は、スーフィーが苦手のように思えた。

(さっきまであんなに威圧的だったのに、また可愛気が戻ってる。でももう騙されない!)

「私、銃とか以前に機械も弱いし、エーテルとやらもやれないし、そんなのでやれるの?それと、最初に言っとくけど、世界なんかより、ママとパパの為のだから」

「………受けて貰えただけでも、こちらとしては有り難い事です!いやほんとに良かった、良かった!ぼ、僕が全面的にバックアップしますよ、これでも有能なんですから。ここに来たらまずは質問タイムにしましょう、これから桐子さんも、もっと知りたい事が沢山出来るでしょうから」

「それは有り難いわね。で、エーテルはどうしたらいいの?」

もうどうでも良くなってきた。

とりあえず、母の要望は叶えた。

自分が変り身する事で、兄は一応無事であろうし、助かるかもしれないのだから。

(根本的に、自分の今までの考え方に、修正入れないといけない時期かもしれないなぁ)

身が入らず、素っ気ない返答ばかり返してした。

「武器があれば大丈夫です。原則的にエーテルは、武器を通してその威力を発揮しますから」

「原則的に?応用編もあるって事?」

「……ま、それは後々で良いのでないでしょうか?今日はお疲れになったでしょう。お風呂やお食事はいかがです?今ご用意をッ!」

「今日は帰らせて、家で寝たい。明日来るわ、決めた以上、逃げたりしないから」

「…そうですね、詰め込み過ぎるのも、お体に障りますね。では続きは明日で、次回は是非、ぼ、僕の食事も召し上がって頂きたいなぁ。そ、それにルーピーズの話もまだですし、そ、そうだ!明日は武器も見繕って、細かな打ち合わせもしましょう!ではないのです早速扉を…」

「あ…」

スーフィーが『扉』と言った瞬間、目の前に映画館の入り口のような、大きな扉が出現した。

彫刻も細かく、モチーフは動物のようだ。

格調高く、高価な扉を前にして言った。

「全てあなたの胸先三寸って事ね。良いわ、気に入った。乗ってあげるわ、あなたの手のひらで踊ってあげる。じゃ明日」

(………)

『バタンッ!』


後ろを振り返る事無く、扉開け、こちらに戻ってきた。

戻った先は、当然、兄の部屋。

行き時と同様、パソコンの前に座っていた。

最後、スーフィーはどんな表情をしていたか?

もうどうでも良く思えていた。

イチイチ気にする方が馬鹿らしい。

「そ、そうだ!時間は?何時…って、ハハッ、ハハハッ…」

パソコンの時間に食いつくように見た途端、自分のモノとはおもえない乾いた笑い声が、勝手に口から漏れていた。

信じられない事に、こちらの時間では、あれから10分程度しか経っていなかった。

(もう数時間経った感覚だった。これとスーフィーの仕事なんだろう。そんなの相手に、無力な私が、勝てるわけないじゃない!)

「ハハッ…ハハハハッ…力があれば、何とでも出来るのかな?私にも力が手に入るのかな?そしたら、スーフィーや兄や…、どうにでも出来るのかな?」

うつ伏せた時に、一筋光るものが流れた。

「今日は疲れたよ…本当に疲れた。もうこのままでいいから寝たい…」

また光るものが流れていく。

スースーと息の漏れる音が聞こえ出すのも、時間はかからなかった。

また新たなアイコン数個。

画面上に展開されつつあったのだが…。

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