いじめ

花谷 鈴は、今日、高校を辞めた。


理由はありきたりないじめだ。


クラスの連中から攻撃され、除け者にされるのが許せなかったのだ。


花谷はとある廃墟のビルにやってきた。


進入禁止の看板を無視して、ビルの中に入った。


ビルの中の階段を登り、屋上までやってきた花谷は、自らの町を見渡してみた。


この町は数年でだいぶ変わった。


森はだいぶ無くなった。


コンクリートはだいぶ増えた。


いじめは良くない。


大人は言う。


だが、いじめは無くならないだろう。


私の町は、この数年でだいぶ変わった。


活気の溢れていた商店街は、新しくできたショッピングセンターにより、一気に廃れ切った。


今や、シャッターがかかってない店の方が少ないくらいだ。


新しくできたレンタルDVD、漫画を取り扱う大型ショップは、何故か最初、中古の漫画、ゲーム販売店として、この町に現れた。


当然、大型店には勝てない。


この町の個人経営の中古漫画、ゲーム販売店は全て潰れた。


その後、大型のレンタルDVD、漫画ショップは、本来の姿を取り戻し、中古品を販売することを辞めたのだ。


最初からレンタルDVD、漫画ショップとして大型店が現れていれば、共存することができたかもしれない。


しかし、少しでも不利益になりそうな存在は消すことを、その大型店の経営者達は選択したのだ。


一番、効率よく敵が消え去る手法を取ったのだ。


おそらく、そんなの氷山の一角なのだろう。


この国では、もっと多くの、強者による弱者の殲滅が行われている。


それは合法ではある。


しかし、強者が弱者をいたぶることをいじめと呼ぶならば、それはまさにいじめだろう。


花谷は思う。


彼らは、自分の子供にいじめはいけないと言うのだろうか?


花谷は感じる。


彼らは、自分の子供にいじめはいけないと言うのだろうな。



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ぐにゃり 人間 計 @neomero

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