第48話 シェル

【概要:剛腕ダロス 登場】


【パレナ大学講堂にて博士研究員フィナは語る】


「皆さん、ご覧になれますか?

 これが先日鹵獲された旧世界の兵器…」


「多脚装甲戦闘車両(Multi-legged Armor Battle vehicle)です。

 略してMABVと呼ばれていますね」


「足先についた駆動輪での高速移動に加え

 4本の多脚とボディのコンパクトさを活かし

 閉所や高所に潜むことが可能な車両となっています」


「特筆するのはその小回りの効く点に加え

 サイドアームについたマシンガンの利便性と

 ボディに備え付けられている対戦車バズーカの威力でしょう」


「資料によるとロリュー軍が多数保有している戦車

 M1エイブラムスの装甲をも貫いたとか。

 是非、実験してみたいですが、残念ながら砲弾もありませんし

 この機体も壊れていて現在、修理できる方法がないか

 エンジニアの方々と検討中です」


「今現在、ロリューの首都ケイヤで起きている内戦にも

 多数のMABVが投入されていると聞いています。

 もしかしたらまたサンプルが増えるかもしれませんね」


「え?現地に派遣されているパレナ戦士団の方々なら

 MABVに勝てるか…ですか?

 う~ん…彼らの噂は聞いていますが…

 正直それは難しいと思いますよ」


「人間の足ではMABVの機動力に対応するのが困難な上に

 たとえ近づけても戦士団の方々の武器は未だに刀やハンマーといった

 原始的な武器ですから、この装甲には歯が立たないかと…」


「そうですね…もし、MABVのスピードに対応できて

 この装甲を打ち砕ける人がいるとするなら…」


「それはもう」


「人間じゃありませんね」


所変わってロリューの首都ケイヤ東部。


丸みを帯びた変わった鎧に身を包んだ巨躯の男がいた。

ダロスというパレナ戦士団に所属する男である。

その周りを2台のMABVが旋回している。


そして唐突に発砲するMABV。

しかし、その銃弾はことごとく男の

角のない曲面デザインの鎧によって弾かれていた。


シェルアーマー。

曲面型のボディは銃弾を反らす作用があるという

学説から考案・開発された防御鎧。


エンジニアのゴサク率いる研究所が

新しく試作したその鎧の運用テストも兼ねて

今回ダロスが試着しているのだ。

どうやら効果は抜群のようである。


そして彼が持つ無骨なハンマー。

これもゴザクの手作りである。


重量120kgを超える鋼鉄の塊。

軽量化を一切考えずただ強度だけを追求した

ダロス仕様の狂気の一品。


それをダロスは地面に向かって打ち下ろした。


地鳴りと共に亀裂の入る路面。

そこに次々とはまり込むMABV。


動きの止まった所を一撃。

巨大なハンマーはMABVの装甲を一瞬で砕いた。


もう一台のMABVは砲塔をダロスに向け

件のバズーカ砲を放つ。


最新式戦車の装甲にさえ穴を開ける砲撃。

まともにもらえばダロスの鎧でもひとたまりも

ないだろう。


しかし、冷静にその弾道を見切ったダロスは

ハンマーで砲弾を上空へとそらす。

そして振りかぶり最後のMABVに止めを刺した。


なんと数分の交戦時間でMABVを2台も仕留めてしまったのだ。

これも戦士団きってのパワフルファイター

剛腕ダロスだからこその芸当。


混迷を極めるケイヤの地に

今、また一人の猛者が登場した。

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