気になる話

「今日はどうしましょうか。フィアさんは何かやりたい事は有りますか?」

「私は特にやりたい事は無いですね」


私達は宿の一室で、今日の相談をしている。

何故ならランさんに放置され、もとい自由時間を与えられているからだ。


「今日は少しやる事が有るから各自自由行動だ。ただし面倒は起こすなよ」


ランさんはそう言って、早朝に部屋を出て行った。

内容は聞いていないし、イコさんも聞いていない様だ。


『一番起こす奴が何を言っておるのか・・・』


と、イコさんもぶつぶつと言いながらどこかに行ってしまい、部屋には私たち二人だけだ。

いや、正確には4人になるのかな。私の両腕には一つずつ人の魂が入っているのだから。

とはいえ片方は話しかけてくる事なんて無いから、良く解らないけど。


「エルさんは何かやりたい事は無いんですか?」

「私は皆様のお役に立つのが仕事ですから」

「いえ、でも、多分エルさんにも言ったんだと思いますよ、さっきの自由行動」


私の言葉に一瞬思考し、はっとした顔になるエルさん。

この人日が経つにつれ、何だか残念な感じになって行ってる様な気が。

初めて会った頃は、もう少しきりっとしていた感じだった気がするんだけど。


「ですが、私も特にやりたい事は無いのですよね。ここが宿でなくラン様の拠点でしたら、掃除の一つでもするのですが」

「もうちょっと行った所に有るらしいですけど、そこに着いたらむしろエルさんは暫く忙しいのでは。免許取らせるって言ってましたし」

「免許ってどれぐらいかかるんでしょうね?」

「さあ、私も持って無いので・・・」


免許って私も取れるのだろうか。取れるなら私も持っておきたいけど。

今度ランさんに聞いてみよう。


「あ、そうだ、掃除は出来ずとも食事は用意して損は無いですし、私は食材を調達して来ようと思います。折角街に居て宿に泊まっているのですから、ちゃんとした食事を御作りしましょう」

「あ、良いですね。ランさんなんだかんだエルさんの料理褒めてましたし」


エルさんは、自身が基本的に普通の食事を必要としない体にもかかわらず、料理は上手い。

彼女の親御さんの事や、彼女の身の上を考えれば無くても問題なさそうな技術な気がするのに。


「では、私は出かけてきます。フィア様はどう致しますか?」

「私はちょっと、一人でお留守番しています」

「そうですか。では、行ってまいります」

「はい、いってらしゃい」


頭を深々と下げて出て行くエルさんに手を振り、彼女を見送った。

扉が閉まったのを確認して、私は左手に話しかける。


「ヒナミさん、聞こえる?」

『ええ、聞こえていますわ。どうかしたのかしら?』

「折角何もない時間だし、ヒナミさんとお話ししようかなって」

『あら、話なら最近は割と良くしているじゃありませんの』


確かに、ヒナミさんと意志疎通できる様になってからは、ちょくちょく話す様になった。

ただ時々、なぜかヒナミさんが物凄く話しにくそうにしていたけど、あれは何なんだろうか。

ヒナミさんは聞いても、どこか不機嫌な態度になるだけで教えてくれない。


「今日はちょっと、ヒナミさんの事を聞きたくて」

『私の事ですの?』

「ヒナミさん前に、自分は封印されているって言ってたでしょ?」

『ええ、言いましたわね。肉体はまだ生きていますわよ?』

「あ、そうなんだ。その辺りの事やっぱり気になって。右手の人は全然話してくれないけど、折角話せるなら聞いておきたいなって」


一緒にいるというか、体の一部として常にいるのだし。

ヒナミさんが悪い人じゃないのは解っているけど、やっぱり気になる。

ランさんの事もきにはなるけど、あの人は聞いても絶対身の上話はしてくれないと思う。


『そうですわね。別に構いませんけど、大した話じゃありませんわよ?』

「でももし良いなら、聞いておきたいんだ」


そうすれば、ヒナミさんの事だけじゃなくて、ランさんの事も少し見えるかもしれないから。

あの人が優しいのか怖いのか、良く解らなくなっている自分が居る。

恩を返さなきゃ、あの人の役にたたなきゃっていうのはいまでも有る。

けど、この間の事を考えると解らなくなる。

少しでもランさんの事を信じたいから、あの人の話を聞きたい。


『ま、良いですわよ。そうですわね、何処から話しましょうか・・・』


幸いにも、ヒナミさんは乗り気の様だ。

騙している様で申し訳ないけれど、彼女の事が知りたいのも事実。

・・・どんなとんでも話が出るか、少し怖いけど。

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