泣き声

「エル、今回あんまりやる気ないから、戦闘は任せるぞ」

「え、あ、はい!」


ダラッとした気分でエルに言うと、物凄く張り切った声で応えられた。

やる気が有るのは良いが、この娘は空回りが過ぎるのが不安だ。

もう少しやる気が無い位で良いんだがな。


「うーん、このあたり、かな」


恐らく空間がねじ曲がっている境であろう場所で立ち止まる。


「ラン様、解るのですか?」

「さっぱり解らん」


とはいえ無駄に何度もグルグル走ってたわけじゃない。

こういうのは完全に繋げているように見えて、割とほころびが有る。

その綻びを探して走り回ってたわけだが、判ったのは繋がれている空間に対する違和感だけだ。

まあ、違和感もてただけマシとは言えるか。


一応試しに繋がれているであろう場所に銃弾を撃ち込んでみる。

だが帰ってくるのは銃声だけだった。やっぱ無理か。

何処のどいつがやったのか知らねーけど、めんどくせーなぁ。


「そうだ、エル」

「はい、何ですか?」

「ここ、ぶん殴れ」


試しにエルにさっき撃ち込んだ地面を殴らせてみよう。

もしかしたらこいつ程の力なら何か影響が有るかもしれない。

単純に腕力だけの話じゃなく、こいつは解ってないだけであのへたれの力を持ってる筈だしな。


「解りました!」


私の言葉にやる気に満ち溢れた表情で前に出るエル。

なんだか嫌な予感がして、軽く下がるのではなくとっさに飛びのいた。


「ふっ!」


エルが気合を入れて地面を殴りつけた瞬間、地面が吹きとんだ。

周囲の木も草花も全て吹き飛び、大きなクレーターが出来る。

もうちょっと飛びのくの遅かったら巻き添え食ってたな。

クレーターを作った本人はそこに滑り落ちて埋まっている。


「あ、あれ?」


エルは自分が作ったクレーターの底で、呆けた声を出す。

恐らく本人もここまでの威力を発揮するとは思って無かったんだろう。

気合を入れすぎだよ、お前。


「おーい、無事かー?」

「は、はい、すみません」


エルはおそらくまた怒られると思ったのか、即謝ってきた。

怒んねーよ。むしろ褒めてやるよ。

おかげでとりあえず現状は打開できた。


さっきまでずっとループしていた景色から、先の道が現れた。

エルの打撃で綻びの部分が完全破壊されたんだろう。

やっぱこいつあのヘタレの力持ってるだけ有るな。

その力を使いこなせればこの程度破壊して外に出れるんだろうが、おそらく無理だろう。


こいつはあのヘタレと違って、人の身である事に固執してる。

そうである以上あいつ程の性能は期待出来ねーだろう。

なんだかんだあのヘタレ、かなりの化け物なんだよな。


「とりあえず先に進めるな。よくやった」

「え、は、はい!」


原因作った野郎は見つかんねーが、先に進めるなら別に良いか。

正直、私の邪魔しやがったしぶっ殺してやりてえとは思っているが、探すほうが手間だ。


「ラン様、あちらから泣き声が聞こえます」

「あん?」


車に戻ろうとすると、エルが何かを言い出した。

泣き声なんぞ私には聞こえないが。


「・・・・・・聞こえねえぞ」

「微かに、かなり遠い位置ですが聞こえます。子供の声です」


どうやら私には聞こえない範囲の声の様だ。

まあ、こいつ化け物だし、聞こえてもおかしくないか。

泣き声ね。明らかに怪しいが、どうせ行きたいんだろうな。顔に気になるって書いてやがる。


「良いぞ、行って来て。あたしは車に戻ってるから、連れてこい」

「はい、ありがとうございます」


エルは深く礼をすると、一瞬でその場から消えた。

何処まで行ったんだあいつ。距離が遠いって相当遠くだなこれ。


「普通こんな所で泣き声なんて、怪しいって思うのが普通だと思うけどね。街も遠いし」


あの世間知らずは素直に餌に引っかかった様だ。

まあ、良いや。ぶち殺す対象が向こうから来たなら楽で良い。

私を罠にはめた上、前に出てきて無事で済むと思うなよ。

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