エルフリーデの想い

「あっ・・・良い感じ・・・んあ・・・」


甘い声を出しながら、ランさんがベットで溶けている。

その余りの艶っぽさに少し驚いてしまった。


「お褒め頂き、ありがとうございます」


エルさんがランさんの上にのって、全身マッサージをしている。

休める街に着いた時に、ランさんがずっと運転してたせいで体が痛いと言うと、彼女自らやりたいと言い出た。

ランさんは最初こそ訝しげな顔だったが、今では見ての通り溶けている。


「あっ・・・はぁ・・・んっ・・・あぁ・・・」


ランさんはよほど気持ち良いのか、声がとても艶っぽい。

声だけ聴いたら勘違いしそうな程だ。そんなに気持ち良いのかな。


『気になるならば、後で頼んでみてはどうだ?』

「え、あ、いや、そんな」


じっと見つめているとイコさんにそんな事を言われた。

気にはなるけど私は後部座席で座っていただけだし、そんな事はとてもじゃないが頼めない。

私は何もしてないし、何の役にも立ってない。


「うあっ・・・んあっ・・・」

『奴の様な声を出すのが恥ずかしいか?』

「い、いえ、そういう訳じゃないですけど」

「イコ・・・あっ・・・うるさ、んあっい・・・」


ランさんはイコさんに文句を言うけど、気持ち良いせいかいつもの感じはない。

イコさんは呆れた様に溜め息を吐くと、椅子の上で丸まってしまった。


「フィアさんも、後でしてあげますね」

「え、そんな、悪いです」

「お気になさらず。ずっと座っているだけでも、案外疲れている物ですよ」


でもその理屈だと、エルさんだって疲れているんじゃないだろうか。

そう思ってみていると、ランさんはいつの間にか寝息を立てていた。

よっぽど気持ち良かったんだろうな。

エルさんはランさんが寝た後も、しばらく続けていた。








「じゃあ、フィアさん、そこに転がって貰えますか?」

「あ、えっと、はい」


笑顔で言うフィアさんの言葉を断る気は起きず、戸惑いつつも頷く。

ランさんは完全に熟睡している、物凄く幸せそうだ。


「では、力を抜いて下さいね」


そう言ってエルさんは、肩から何かを確かめる様に全身を触っていく。

何となく、それだけでも少し気持ち良い。


「よし」


そんな声が聞こえた後、絶妙な力加減で肩を押される。

何だこれ、凄く気持ち良い。


「ふあっ」


自分の口から出てきた声に驚いて、少し顔が熱くなる。

今の声、本当に私の口から出てきたの?


「ふふ、気持ち良かったみたいで良かったです」


エルさんは楽しそうにマッサージを続ける。


「あっ・・・はあっ・・・」


あ、これだめだ、勝手に声が出る。力がどんどん入らなくなっていく。

凄く気持ち良い。意識が蕩ける。


「お母様達も気持ち良い時はこんな感じでした。懐かしいです」


そうか、エルさんは昔を懐かしんでいるのか。

そっか、なら、このまま体を預けてしまおう。

そう思うと、急激に意識が遠のいていくのを感じる。

気持ち良すぎて抗えるはずもなく、元々抗う気も無く、完全に意識は溶けて行った。





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寝息を立てているお二人を見て、安心して息を吐く。


「良かった」


やっと役に立てた気がする。ここまでずっと役に立てず、足を引っ張っていた。

走行中も見当違いの事を言ってしまい、叱られてしまった。


「やっと、お役に立てた」


嬉しくて、思わず口に出てしまう。

お母様の事を思い出して、気分が良いのも手伝ったのだろう。


『やはり気にしていたか』

「イコ様」


寝ていたと思っていたのだけど、どうやらイコ様は起きていたらしい。

呟きを聞かれてしまった。


『お前は役に立っている。ランは無頓着であるし面倒くさがりだからな。雑務を率先してやるお前はちゃんと役に立てている』

「そう、なのでしょうか」

『暴走しがちなところさえ直せば、問題ない』

「す、すみません」


先日の事を言われているのだろう。あの街で走り出したときの事を。

思い出すと恥ずかしい。


『ランは意外とお前が気に入っている様だし、大丈夫だ』

「そ、そうなのですか?」


とてもではないが、ラン様が私を気に入っている様には見えない。

むしろ、邪魔だと思われていると思っていた。


『あやつは天邪鬼だからな。そのうち慣れる』

「精進いたします」


私の答えに何となく方眉を上げたような気配を感じたが、イコ様は猫なので良く解らない。

でも、気を遣って貰ったのだとしても、嬉しかった。

もっとお役に立てるように頑張ろう。

お母様を、お父様を救って下さった恩を返さなければ。

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