つまらない結末

「あはははははははは! ゲホゲホ!」


ああ、可笑しい。笑いすぎてむせてしまった。これは予想外です。

痛めつけるだけ痛めつけて殺されると思っていたのですが、まさかあんな物を持っているとは。

いやー、楽しませて貰った。親父殿で楽しめなかった分を十二分に楽しませてもらったよ。


じゃあ、見つかる前にこの街を去ろう。

私は居ないから問題ないとは思うが、万が一という事がある。


「さて・・・と・・・?」


不意に、痛みを感じた。

自分の体を見ると穴があいている。

一箇所ではない、何箇所も。


「・・・・なんだ・・・これは?」

「いい趣味してるじゃないか」


困惑の声を上げると、後ろから誰かに話しかけられた。

その声に振り向くと、そこにはあの忌々しい女が立っていた。

ヒガサネ・ランが、銃を構えていた。


「ヒガサネ、そんなバカな!」


ありえない。何でお前がここに居る。

私の術は完璧だったはずだ。奴らの誰にも私の記憶は残っていない。

わざわざ意識を奪った状態での確認すらしたんだぞ!


「残念だけど、こっちにも同じ様な事出来る奴が居るんだ。撃たれる迄気づかなかっただろ」


そう告げるとヒガサネは銃を降ろし、背を向けて去って行く。


「撃たれた? これはお前の仕業なのか!? なんだ一体、何をしたんだ!」

「さあな。あいつに聞いてくれ。最も答えてくれたらだが」


ヒガサネの態度は、一切答える気が無いと言っている。

何よりも相手にする気すらないように感じる。

背を向けたまま、一切こっちを見ない。


「くっ、貴様は何処へ行く気だ」

「また旅を続けるだけさ。お前みたいなのはぶち殺しながらな」

「解っていて話をそらすな! 貴様が私を放置して行くはずが無いだろう!」


私はこの程度で死なない。銃で打たれた程度で死ぬ様な脆弱な存在ではない。

ヒガサネガそんな事も分かっていないはずがない。そう思い叫んだ。

その言葉にヒガサネはぴたり止まって、体を傾けこちらを向く。


「ああ、それなんだけどさ。?」


あの女は私の感情など何も関係ない、知らない。お前の存在自体見えていない。

そう、言った。


その意味を解ってしまった。あいつが本当に私が誰なのか解っていないという発言じゃない。

あれは、私を私自身の力で殺す。そういう言葉だ。


「い、嫌だ! 死にたくない! まだ300年も生きていないんだぞ私は! こんなところで人間の小娘に殺されるのか!」

「さあ? 知らんよ。じゃあな」


今度こそヒガサネは背を向けて消えていった。もはや完全にお前に興味は無いと。

いや、もしかしたら最初から興味は無かったのかもしれない。

どこだ。私はどこで間違えた。


嫌だ、消えていく。私が消えていく。

私自身の術で私がどんどん削られ、何かに塗り潰されていく。


教えてあげるの。私を覗こうとしたのが間違いなの。


そうか、あの娘か。お前があの娘を守っているのか。


そうなのよ。あの子は私の可愛い可愛いおもちゃなの。他人が手を出すのは許さないの。


ああ、そうか、それは申し訳ない事をした。


良いのよ? 良いの。もう貴方消えちゃうの。消えちゃうから素直なの。

消えてまっさらになって、壊れるの。


こ・・・・わ・・・・。


壊れたの。自分の力で心を壊し続けたの。これはこれで面白いの。

真っ白なの。でも汚いの。欲しくないの。だから潰しちゃうの。

じゃあね、汚い心食いさん。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「チッ、ただの骨折り損じゃねえか。ただ繋げてるだけならともかく、あいつが侵食してたらストックにも出来やしねえ。なんとか干渉出来たから良かったけど、めんどくせえ」


愚痴をこぼしながらフィア達の所へ向かう。

あいつらは街を出る準備を終わらして、街の入口で待っているだろう。


「くっそ忌々しいな。いつの間に繋げやがったんだか」


私の精神に微量に野郎の精神繋げやがって。こういう事するから封印されたんだぞお前。

最初気が付いてなかったわ。くそったれ。

私が付けたルールを上手く逆手にとってきやがる。油断ならねーな。

けど確信できた。あいつはフィアを守るのに最適だ。あいつは害意がすぐ解るからな。


問題はやり方だが、今回は許容範囲か。

私にしか害は来てないからな。あの男も災難だったな。

あいつはお前と同じ事を遠距離できるんだよ。いや、それ以上にえげつねえか。

めんどくさがって手を実際に下すのはしねえけど。


あいつの行動は基本は受動的だ。誰かから干渉を受けた時にしか行動を起こさない。

だが、あいつにとって看過できない干渉を受けた場合、あいつはとんでもない行動に出る。


私が知ってる一番古い記憶では、とある町の住民の精神を全部つなげて混ぜやがった。

結果その住人は皆壊れた。当然だ。個を認識出来なくなっちまったんだからな。

ま、そこの連中は町ぐるみで色々やってた連中だからどうでも良かったが、放置出来なかった。


あいつの魂は元々一つだったものが、なぜか分かれてる。

分かれた際の一つ一つの魂の力は微量にも関わらず、離れても消滅しない。

あれがあいつの力なんだろうが、そのせいであいつは私の中に押しとどめておくしか出来ない。

外に出した際、ガッチガチにルールで縛るって事が出来ない。


だからあいつに強制しているルールは二つだけ。

フィアを守る為だけに力を振るうことを許す。

フィアを壊さない。


あいつが何かをやろうとしても、この二つ以外は無理だ。

本来全て強制する力をその2点だけに絞ったから、あいつでもそれには逆らえない。

そもそも、基本は自ら動かねーから、この二つの縛りで十分てのもあるけどな。


あいつは今回それを逆手にとって、フィアに害をなす行為をしようとした人間に干渉して、そのタイミングをねらってフィアにも干渉したんだろう。

フィアがヒナミと繋がった話を聞いて、あたしにも何かしたんじゃないかと調べたら案の定だ。


だが、まあ良い。

あいつはフィアを気に入った様だし、大丈夫だろ。



そいやあの化物、私を恨んでたみたいだが恨むのは筋違いだ。

あいつらはあいつら自身の争いで滅んだ。私は偶々そこに居ただけだ。

あいつはそれを、私が一族を滅ぼしたとでも思ったんだろう。


滑稽だな。勘違いで数十年を費やし、勘違いの行動の結果私に殺されるなんてな。

だがあいつ自身も命を持て遊んだ。因果応報だよ。いつか私も、な。




ほんと、世の中バカばっかりだ。

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