正義の破綻者

「始まりましたねぇ」


おそらくこうなるだろうと踏んではいたが、全員かなり行動が早かった。

指示を無視して逃げて正解だった。

しかしヒガサネが絡んでいる事を教えたら即切りますか。相手が息子だというのに容赦がない。


まあ、手をこまねいていたらヒガサネが来るという事は、それだけ恐怖という事だろう。

あれを敵に回すという事は、単にあいつだけを敵に回すだけでは済まない。

あれ一人でも驚異だというのに、その他にも相手が増えるなどやっていられません。


街の傍にそびえ立つ崖の上から、眼下に広がる街並みを眺める。

そこから悠々と、置いておいた『目』でクレメア、ヒガサネ、警務隊の男を確認する。


警務隊の男は恐らくこの件の大元を逃がす気はないのだろう。

子供に手を出したのがまずかったんでしょう。まあ、やったのは私ですけど。

ヒガサネと話すまでその事実を知らなかった辺り、この男は私の驚異にはなるまい。


ヒガサネが連れている娘たちは家から出ていないし、クレメアはあのバカの方に向かっている。

ヒガサネ自身は家に向かっている。私に気がついた様子はない。


よしよし、問題ない。あのバカどもの最後を眺めてから帰りますかねー。

どちらも私のことは『知らない』し、なんの情報も出てこないからな。

少しぐらい最後を眺めて楽しんでも大丈夫だろう。




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さて、どすっかね。

ここにいるのは間違いないけど、警備厳重なんだろうなー。

めんどくせえ、正面からで良いや。どうせ何がいようと関係ねえ。全員事故に遭うだけだ。

銃を左手に握り、右手てゆっくりと扉を開ける。


「こんばんはー」


そう言いながら入口を開けると、いきなり刃物で切りかかられた。

その刃をあっさりと避けて、斬りかかってきた奴の脳天に大口径の銃弾をぶち込む。

脳症をぶちまけてそいつは倒れた。大口径の銃は怖いね!


「ちわー、因果応報を届けに来ましたー」


まあ、それは俺にも言える事だけどな。

きっと俺はろくな死に方しねーだろ。

市民を守る為だからって、市民に直接的な手を出す輩はこうやって強制排除してっからな。


「てめえ! 警務隊の死神が何しにきやがった!」


ボディガードだろう男が、後ろにいるおっさんを庇いながら叫ぶ。

俺をちゃんと知ってる奴がいたか。そりゃー斬りかかってくるわ。


そんな名前で呼ばれてんのね、今の俺。

死神か。そうだな、お前らには死神だろうな。でもこれでも昔よりは大人しくなったんだぜ?

なにせ近年は悪人でも人殺しは良くないって風潮が強くなっちまったからな。

だから適度にボコボコにされてから、死なない程度に潰す方向にシフトしたんだけどねー。


けど今回は無理だ。

お前は子供に手を出した。その上お前はの立場でありながらヒガサネに関わった。本当に最悪だ。見逃せる筈が無い。


「よう、国会議員さん。俺が来た理由は解ってんな」

「な、何のことだ!」

「てめえの息子の事だよ。危うくこの街がヒガサネの敵に認定されるとこだったぜ」


コイツは議員でありながら、裏の世界の金を欲しがった。

いや、議員だからこそ欲しがった、か。

この国は金こそが力の部分が強い。人が居ても金がなきゃ何にも出来ねぇ。

だからこいつは過去に、ここのまとめ役でヒガサネと縁のあるクレメアに接触した。

そんな解り易いバカにアイツが付くわけがないがな。


今回の事は意趣返しだったんだろう。バカ息子をうまくこの街の長にしてクレメアに嫌がらせをするつもりだった様だが、あのバカは何を勘違いしたのかクレメアを殺そうとした。

それだけなら良い。それだけなら俺はやる気は出ない。

せいぜい関係ない職員がクレメアの餌食にならに様に監視していた程度だ。

そうしねーとヒガサネとの約束を破る事にもなるしな。


だがあいつはヒガサネを巻き込んだ。

ヒガサネ自身はそこまで自分が関わりあるとは思ってない。

だから今回あいつは静かだった。そのおかげで助かったが、それは運が良かっただけだ。


「今回のお落とし前、あのガキ一人で終わると思うな」

「わ、私に手を出すつもりか! いくらヒガサネと関わりある貴様でも議員に手を出してただで済むと―――」


ひゅっと、おっさんにあらかじめ紙ヒコーキにしておいた紙を投げつける。

中々キレイに飛んだな。


「な、何だこれは」

「開いて読んでみな」


おっさんはその紙の中身を見て、青ざめた。

当然だ。コイツは今、国家反逆罪なんていう、素敵な罪状が付いちゃってんだからな。

しかも国の代表の印鑑付きだ。


「な、何なんだこれは! どういう事なんだ!」

「これがヒガサネに手をだすって事だ。国はあれに手を出すようなバカはいらないって判断さ」

「そんな馬鹿な! どこに証拠があると言うんだ!」

「さてな、どなたか知らないがご丁寧にヒガサネに手を出した報告を、誰かがお前にした時の録音したデータをくれたんでな。あいつらはあっさり信じたぜ?」


その代わり、ヒガサネにこの件は見なかった事にする様に説得しろって言われたけどな。

あのデータの出処が解らねーのはしゃくだが、解析した結果コイツの声なのは間違いなかった。


俺は即座に国に連絡を取った。

こういう時ヒガサネ担当なんてわけの解らない立場が役に立つ。

国が俺なんかに即対応してくれたからな。そして結果は見ての通りだ。


データが無かったら逃げられてたかも知んねぇんだよな。

流石に何にも無しでは流石の俺も議員に手を出せねえからなぁ。

バカ息子切った以上、すぐ逃げるだろうし。


「お前らも残念だったな。コイツの傍にいなきゃ、巻き添えは食わなかったのに」

「なんだと!?」

「ここにいる連中は一人残らず殺す。でないとそのバカを『逮捕』しなくちゃいけなくなる。お前達は俺の警告に従わず、最後まで抵抗し、銃殺された。可哀そうにねぇ」


そこそこ多いが、この程度ならすぐ終わる。

クレメア一人とやるより随分楽だ。

久々に、本気で暴れてやる。


「ふざけんな! それが警務隊のする事か!」


そうだな。普通はしねえよ。市民の安全を守る為の国家組織だからな。

けど残念。目の前の男は子供が可愛くて可愛くてしょうがない、大馬鹿野郎なんだよ。


性癖的な意味だけじゃない。子供ってのは可能性の塊なんだよ。未来のための資産なんだよ。

それに手を出す様な輩はいらねえ。

エゴだな。ひどいエゴだ。けど俺はそのエゴを通す。その為にこの仕事に就いたんだ。

抗う術のない圧倒的な弱者を助ける為に、お前らみたいなのから守る為にな。

彼らを、彼女たちを助ける。その為に俺は居る。勿論当たり前に生活している人もだ。


「お前らみたいな害虫は排除してもどうせ沸いてくる。この程度居なくなっても誤差だよ」

「害虫だと・・・!」

「ああ、害虫。気に障ったか?」


おどけて答えると、俺のいる所から右側の扉が開け放たれた。

奥から見えたのは見えたのは、ガトリングガン。

うーわ、マジかよ。これ俺じゃなくてヒガサネ用に準備してやがったな。

まあ、あいつにはそんなもん通じねーけど。


「なっ!」


俺はそれが見えた瞬間連中の中央に飛び込み、連中はまさか突っ込んでくるとは思って無かったらしく驚きの声を上げた。

馬鹿だなー。ガトリング用意してんなら、最初から使えば良かったんだ。

今使ったら味方全員死ぬぜ?


そんな指摘を頭の中だけでしつつ冷静に一人、また一人と脳天を打ち抜く。

まあ、この通り使わなくても死ぬけどな。


手持ちの獲物で俺を殺さんとする連中を、淡々と撃ち崩していく。

合間にガトリング持ってる奴も撃っておいた。馬鹿だろ。ガードぐらいつけとけよ。

超近距離でやってるから同士討ちも発生する。

その瞬間にそいつらは死ぬ。もちろん俺に撃たれて。止まった隙なんざ見逃すかよ。

特に目立って危機もなく、襲いかかってくる連中の攻撃をすべていなして皆殺しにした。


「あ」


流れで議員のおっさんも一緒に撃ってしまった。

まあ良いや、あとはお国に報告して俺の仕事はバカの逮捕でおしまーい。


ま、今頃そっちもお亡くなりになってると思うがね。

なので、まだ死んでないぐらいが本当に望ましいなー。

あ、治療間に合わなかった、テヘ☆

って感じで行きたい。




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「ふむ、最後に残して殺すと思いましたが、あの男にはそういった感情は無いのですね」


戦闘の途中で見れなくなってしまった。あの親父殿のは乱戦の途中で撃たれた様だ。

ただただ悪の排除。ゴミ掃除程度にしか思ってないな、あれは。

ヒガサネと関わりある者はやはりどこか壊れている。私も人の事は言えないが。


せっかく面白い見世物が見れると思っていたのに、つまらない事だ。

さて、クレメアの方はどうなっているかな?

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