現状把握と混乱と恐怖

気が付くと、私はベットの上に転がっていた。

上体を起こして、今どういう状況なのかを確認する。


あれ、私あの後どうなったんだっけ。

そうだ、クレメアさんとランさんに出会えて、ヒナミさんを助けをお願いして・・・。

その後の、記憶がない。

何がどうなったのか悩んでいると、エルフリーデさんが傍までやってきた。


「フィア様、気がつきましたか」

「あ、はい、エルフリーデさん、おはようございます」

「フィア様、エルでいいですよ」


なら私もその呼び方はちょっと気になる。

私も様付けは止めて貰う様に、お願いしておこう。


「えっと、じゃあ、私も様はいらないです」

「そうですか・・・では今後はフィアさん、と」

「えーと、はい」


フィアって呼び捨てていいんだけどな。

エルさんは私より年上なんだし。

・・・この人にも、迷惑をかけているのだし。


「エルさん、私ランさんと出会った後の記憶が無いんですけど、あの後どうなったんですか?」

「クレメア様がフィアさんを保護されたとイコ様からお聞きしたので、私が迎えに行き、ここまで運びました」


そうか、エルさんが運んでくれたのか。

それはお礼言っとかないと。


「ありがとうございます」

「いえ、ラン様はご自分の身はご自分で守られる方ですので、あの場合フィアさんに私がついて行くべきでした。申し訳ありません」


お礼を言ったら謝られてしまった。エルさんは少し真面目すぎやしないだろうか?

・・・人のことは言えないか。


そうだ、メルちゃん!

メルちゃんの事を―――。

いや、そうだ、思い出した。


あの時クレメアさんは私一人だったと言った。

でも私は直前までメルちゃんと居たはずなんだ。

あの子を下ろして、そのあと―――。


その後、どうした?

メルちゃんは、どこに居た?

おかしい、降ろした後のメルちゃんを見た覚えがない。


いや、その前にいくら私の腕が特殊になったとはいえ、何故片手で抱えて走れたのか

当たり前の様に片手で女の子を抱えられてる不自然に、どうして気がつかなかったんだろう。

いや、左腕があんな事になっていて、判断基準がおかしくなっていたのかもしれない。


「フィア、さん、大丈夫ですか? まだ調子が悪いのでは?」


考え込んでいると顔を覗き込むエルさんの顔が見えた。

その表情は、とても心配気だ。


「あ、す、すみません。ちょっと考え込んじゃって。体は大丈夫そうです」

「そうですか、良かった。ラン様に貴女をしばらく警護する様に言われています。もし外に出るなら声をお掛けください。あ、ラン様は少々出かけてくるそうです」

「あ、はい、解りました」


警護か。あんな事があったなら当然か。

迷惑かけたくないのに、結局迷惑をかけてしまった。


『・・・から・・・じゃ・・・ないです・・・』


ん、だれかの話し声が聞こえる。

どこだろう、なんだか不思議な聞こえ方がした気がする。


『無視するんじゃないですわ! この精神乖離女!』


その声に意識を向けた瞬間、頭の中に大声が響いた気がした。

実際耳に入って来たわけじゃないので耳は無事だが、なんか頭が痛い。

でも、今の声は聞き覚えがある。


「何・・・せいしんかいり・・・?」

『へ、フィア?』

「・・・ヒナミ、さん?」


やっぱり、さっきのはヒナミさんの声だ。

でも急に、なんで聞こえる様になったんだろうか。


『フィア、私の声が聞こえますの?』

「は、はい、何でか解りませんけど」

『・・・ラン、ではないでしょうね。それなら腕を繋げた時に出来る様にしてるはずですわ』


出来るんだ。ランさんなんでもありだな。


『という事はこのクソ女ですけど。あなたがやりましたの?』

「へ?」

『・・・だから返事をしなさい! 無視するんじゃないですわ!』


またも頭に大音量が響く。

いや、正確には音じゃないんだけど、脳に響く感じがする。


「ヒ、ヒナミさん、ごめんなさい、ちょっと声量抑えて・・・」


頭を抱えながらヒナミさんに頼むと、彼女は焦って謝ってくれた。









「とりあえず、その、右腕の人が話せるようにしたって事ですか?」

『おそらく。それ以外原因が無いですわ』

「でも、何ででしょう?」

『解りませんわ。さっきから私の質問にも全く答えませんし。この女の思考は支離滅裂な時があって全く解りませんわ』


ランさん、なんでそんな人ここに入れたんだろう。

流石に思考が理解出来な人は、ちょっと怖すぎる。


『あ、そうそうフィア』

「はい、なんですか?」

『そろそろその娘に説明してあげたほうがいいですわよ。心配そうな顔ですわ』

「へ?」


ふと顔を上げると、エルさんがすごい心配そうな顔でオロオロしてる。

何で?


『フィア、もし貴女が誰も居ない虚空に話しかけていたらどう思うかしら?』

「あ」


私、タダの危ない人だった。

その後エルさんに説明して、なんとか誤解を解いた。

危ない、精神を病んだ人だと思われるところだった。






『ねえ、フィア、少し聞きたい事があるんですけど良いかしら?』

「はい、何ですか?」

『あなた、何であんな路地に入って行ったのかしら?』

「え?」


何でって、そりゃ、メルちゃんが一人で入っていったからついて行いくしか。

今となってはあの子の存在が少し怖いけど、あの時は一人で行かせるわけにはいかなかった。


『あんな路地、一人で入って行けば、攫われないとしても危険はあると分かるでしょう。

クレメアという女にも注意されていたでしょうに』

「・・・ひと、り?」

『ええ、いきなり路地に無言で入って行くから少し焦りましたわ』


ちょっとまって、どういう事?

私はメルちゃんを追っかけていったはずだ。

その後メルちゃんに男がおおいか・・・ぶ・・・。


まって、おかしい、確かにメルちゃんのいた所に男の影がさした。

でもメルちゃんと私の間に立ちふさがった男はこっちを向いていた。

もし通りかかった人間を襲ったなら、それはおかしい。

私たち両方が狙いなら尚の事。


もしかして私、あの時点で一人だった?

じゃあ一体、あの子は、何?

ランさんが帰ってきたら相談―――。

いや、せっかくヒナミさんと話せるんだ。聞いてみよう。


「ヒナミさん、ちょっと良いですか?」


・・・・・・あれ、反応がない。


「ヒナミ、さん? あれ?」


ヒナミさんからの返事がない。

話せなくなった? 何で?


・・・ランさん、今自分に何が起こってるのか解らなくて、ちょっとだけ怖いって気持ちを思い出しました。

相談したいから早く帰ってきてほしいなぁ。

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