穴だらけの襲撃

「イコ、どう思う?」

『たまたま使い易い人間を使った可能性は否定出来んな』


帰ってきた私はイコに相談していた。今回の事は何だか良く解らない。

あの女に殺された連中も回収したが、奴らはタダの人攫いだった。

私の事も知らなかった様だ。つまりあいつらも巻き込まれた側だ。


「そう、なんだよな。私を狙ったにしてはかなりお粗末だ」

『そもそもこの街でクレメアを敵に回す行動を取るとは思えぬ』

「私もそれは思う。けど、化物なら別だろ」

『だが、あれらの技は人間でも出来ぬ事はないぞ?』

「それこそ、そんな事が出来るならこの街じゃすぐ見つかる。あいつがいるんだぜ?」


そう言って忌々しい顔を思い浮かべる。久々にこの街に来てぶん殴った男の顔を。

あのクソロリコンはこういう事にかけては鼻が利くからな。

あいつは裏の人間同士が潰し合うのは放置するが、一般人に危害を加えればすぐ出張ってくる。

今回の事はフィア狙いやがったからな。

こういう事を起こす原因になる様な人間を、あいつが放置してるとは思えねぇ。


『今回は頼るべきなのではないか?』

「国家機関に貸しは作っても借りは作りたくない。特にあいつには」

『ひと晩寝てやればいいんじゃないか?』

「・・・・撃つぞ?」


あれに抱かれるとか、想像でも嫌だわ。

あのクソロリコンは、ただずっと幼い姿の私が良いだけだ。


『冗談はさておき、右腕のあやつは何もしなかったのか?』

「したみてーだな。何か知ってるみたいだが、教える気がないとよ」

『嫌われたものだな』


イコの言葉に苦笑してしまう。

そりゃぁ嫌われてんだろ。封印したのに近かったからな、あいつの場合。

嫌われない方がどうかしている。


「下手な事はしないだろ」

『だがあれを野放しは危険なのではないか?』

「うんにゃ、私の中で一つに纏めてたのを、フィアに完全に繋いだ。だからフィアが死ねばフィアの魂から離れられなくなるし、また私の中に閉じ込められると認識してるはずだ」


あいつは何も語らなかった。それでも良い。最終的にフィアさえ守れば。

強制的に見るにしてもあいつのは手間がかかる。フィアに完全に繋いじまったから余計にだ。


『ヒナミはどうした』

「さっきまで延々愚痴言われたよ。応急処置として、新しく仕入れたマネキンの腕の中に簡易だが別の人形を入れた。とりあえずそれで2、3割ぐらいにはなるんじゃねえかな」

『連絡は?』

「取れる様にした。そのせいで性能が下がったって、やっぱり愚痴られたけどな」


ヒナミの魂を無理やり少し分けて、あたしの所に残した。

これはヒナミ程の化け物だからできる荒業だ。普通の人間の魂を分けたら消滅する。


『一つ思ったのだが、同士打ちを狙った可能性は考えられぬか?』

「あ?」

『クレメアとランが周囲の認識よりも浅い仲だと思われていたならば、あり得よう』


ああ、『クレメア』が『火重 蘭』を襲撃する計画を立てていたっていう認識にさせるためか。

それは少し考えた。だからわざわざあんな大声でしゃべってたんだしな。

でも、なんか微妙なんだよなぁ。


「その場合は狙いはあいつって事になるな」

『今は次の動きを待つしかないか』

「だな、どっちにしろ嵌めるには穴だらけだ。そのうちしっぽ出すだろ」


クレメアの奴は、どうすんのかな・・・。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





写真を眺めながら部屋に座り込む。

周りにはさっきまで腹いせに壊していた家具や調度品が散らばっている。

無事な物は、もう一つも無い。


「シェナ・・・」


写真に写っているのはかつての仲間達。

もう私以外一人も生きてはいない。最後の一人もこの手で殺した。


「あの人、態々口に出しちゃって。相変わらず変なとこ優しくて、捻くれてるんだから」


ランはわざわざ大声で、私の顔に泥を塗ったと言い放った。

あれは周囲に、私の指示では絶対無いという事を知っている。と宣言したんだ。

あの人はそうする事で、私と私の組織への飛び火をしないようにしてくれた。

あくまであの子個人の判断であり、個人的に処分する事柄だと。


「火重 蘭」という人物は、表も裏も手を出してはいけない人物だ。

彼女に手を出したと言われたら、流石の私も潰されかねない。

それを懸念してランはわざわざ口に出して言ったんだ。あの人はそういう人だ。

そしてなにより、私が来る前に私に手間をかけさせずに終わらそうとしていた。


ならば私は、あの人に任せるわけには行かない。

組織の頭として、姉として、妹を殺さずに放置はできない。

あの子一人の暴走に全員を巻き込むわけには行かない。私の手で、やるしかない。


勿論あの子があんな事をする子じゃないのは知ってる。

あれは誰かにいいように使われただけだ。

でも、あれはもう手遅れだ。もう戻れない。

似たような事が前にもあったし、その時も失敗した。

だから、生かせない。殺すしかなかった。


「クソッ!」


ガンと、壁を殴る。また穴がひとつ増えた。

もう、壁も穴だらけだ。


「許さない。絶対に許さない」


どこのどいつか知らないが、この報いは絶対に受けさせる。

絶対に、絶対に殺してやらないぞ。殺してなんかやるものか・・・!

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