第二夜 折り返せない電車
あの世?
彼岸じゃよ。黄泉の国。死後の世界のことだ。
何だって?
おまえさんは、わしらの魂を運ぶ電車に乗っちまったのさ。
冗談だろう?
周りを見ろ。年寄りばかりだろう?わしらはお迎えを待っとった者ばかりだ。
成る程判った!何かのイベント列車に乗ってしまったのか。それともみんなで俺を騙そうというのか?
こんなに大勢でおまえさんなんかを騙して何の得がある?
確かに・・・。では嘘ではないというのか?
嘘ではない。今この電車はあの世へ向かって走っているんだ。
何故あんたはそんなことを知っているのだ?
判るさ。わしらはもう長いことこの電車に乗るのを待ち続けていたのだからな。
一体俺はどうしたらいいのだ?
特急電車だからな、この先、途中停車はない。だがたまにおまえさんみたいなうっかり者が迷い込んでくる事があるのだな。
そんなのひどいではないか?
やれやれ仕方無い。使うつもりはなかったが、わしが作ったこいつをおまえさんにあげよう。
これは…降車ボタンか?
今さっき言ったろう。降車は出来ん。これはリセットボタンだ。押した者だけが時を戻す事が出来る。こう見えてわしは時空物理学者でな。長年開発してきた試作品をようやく完成させた所で、心筋梗塞を起こして倒れたんだ。気づいたらここに座っていた。ま、無理が祟ったんだろうよ。
ではあんた…死んだのかい?
まだだ。丁度生死をさ迷っとる頃だろう。
じゃ、そのリセットボタン、押したら元に戻れるのか?
理論上はな。だがまだ試作段階で、テストもろくにしとらん代物だ。おまえさんがどこまで時を戻れるかは、わしにも判らんので、確約は出来んがな。さあこれを君に預けよう。
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