用心棒となんでも屋と弟子
そう言ってなんでも屋が狙撃用システムとやらを組み上げた。画像認識と電子トリガーを組み合わせた代物だ。
俺には細かいことは分からないが、アクチュエータで銃本体をフレームに載せた奇妙な代物。スコープにはカメラが増設されていて350mでゼロインされているらしい。
「で、どうやって使えばいいんだ?」
「簡単だよ。狙って後付けのトリガーを引くだけだ。あとはレーザーが勝手に距離を測定して
「タイムラグはどのくらいだ?」
「8ミリ秒から一秒。距離や外乱によって変わる」
「一秒? そんなもん使えるとは思えねえな」
「常時計測しているから、ほとんどは10ミリ秒以内だ」
「100fps以上は出るってか。まあそれなら違和感はないだろうな」
「それにトリガーに触れた時のターゲット位置に照準するからすこしくらいブレてもアクチュエータが吸収してくれるぞ」
「それでこんな
「元々据え付け型の狙撃システムとして設計したものだからな。遠隔操作が基本だよ。
「室内から外を狙うとかか。そりゃセンサーを外に出してたらバレるわな」
「ソフトは僕が組んだよ。弾道計算は他のソフトに任せた」
言いながら弟子がコーヒーを
「サンキュ。またAIか?」
「弾道計算はライブラリがあったから。発射タイミングを決めるのは画像認識だよ。機械学習は使ってない。人や警備ロボ以外を撃つこともあるでしょ」
「そういうもんなのか」
「なにかに特化させると他が弱くなるからな」
なんでも屋が補足する。
「これは俺がクルマに乗ったまま使うの前提だ。
「あれは弟子が
「そんな余裕はうちにはない」
「そりゃそうだ。俺みたいなやばいの抱えてるもんな」
ちょっと自虐が入る。
「だからおもしれえんだよ」
三人でコーヒーを一服。
「こういうものもできた」
そういって掃除ロボみたいな形のドローンを複数、出してテーブルに載せるなんでも屋。
ノート
「ドローンからの画像がこれだ。ここをタップしてやるとこっちのマップにマーカーが出るだろ」
画面にはこの付近の地図とドローンが撮影している窓の外が見える。
マーカーはドローンが映し出すビルにセットされている。
「撮影しているビルの座標を表示する装置か?」
「ついでに爆撃もしてくれるし最終誘導用にレーザーも照射できる。便利だろ。どのドローンの映像からでも指定できるし、一部隊あたり同時に15機飛ばしてそれぞれに爆弾を搭載してるから一気に押しつぶせるぞ」
「同時に飛ばせる部隊はいくつ?」
「16。最大で240のターゲットに手榴弾を押しつけることができる」
「一機に一つ爆弾を積んでるのか?」
ドローンを持ち上げて見てみる。外装はプラで、内側にはせっせと内職で作った
「ボムキャリアードローンもある。まあドローン自体の数がそろってないから、まだ70機くらいしか使えないがな。それでも隊長機をいくつか設定して、それが子分をつれて行く感じで運用は簡易化してみた。隊長機を一、子機を八、キャリアーで一セット、六部隊が今動かせる最大だ」
「10機はどこ行った?」
「いざって時の予備だよ。いきなり全部隊投入してどうすんだ」
「ボムキャリアって?」
「そっちに置いてある」
アゴで指し示した棚には大きめのドローン。手榴弾を腹に一ダースほど抱えた、気持ち悪いエビだ。あんなのが飛んで来たら嫌すぎるだろ。
「あれを目標に飛ばして爆弾を落とすのかぁ」
弟子が目をキラキラさせている。子供になにを教えてるんだ。
「落とす数も指定できるし、マーカーに手榴弾を落とした後に指定した場所に自動的に戻る。空爆支援が欲しけりゃ手元の端末からビルや建物を指定できるって訳だ。試験では風の影響もあったが50mから落として半径二mくらいの精度は出たぞ」
「マーカーA、マーカーB、マーカーCにそれぞれいくつ落とす、みたいな指定はできるか?」
「現場からやるのは面倒だろうからマーカー指定だけして口頭で伝えてくれたら設定はこっちでやる」
「これ、飛ぶコースは自動?」
弟子は弟子でそれなりに興味があるようだ。興味の持ち方が技術屋っぽくなってきている。
「基本は自動だが、マーカー指定しておけば順番に向かっていくぞ。高度の指定は必要だな。デフォルトでは50mだ」
十階建てビルをギリギリ飛び越える程度か。ターゲットの通販企業国家の
武装ドローンと配送ドローンで比較するのもなんだが、配送ドローンは品物を落として壊すわけにもいかない、でもビルにぶつけるのもいかん、ということで
そのあたりを聞いてみると。
「ああ、時計回りルールな。エリアをつなぐコースとエリアでの進行方向を変えるラウンドアバウトゾーンを決めておけば、あとは相互に五m以内に近づかないってルーチンでうまく運用出来るだろって俺が適当に決めたやつだ。退職するまではそれなりに
お前が決めたのかよ。
「簡単な基本ルールだけ決めておけばルート選定もオートナビ用ルーチンが使えたからな。クルマ用のルールをドローンに持ってきただけのつなぎだったんだが、まあ上手く行ってるんだからいいだろ。俺らが飛ばすドローンはそんなの無視して最短距離を飛んでいく。爆弾の即時配送ってな」
そういって笑いながらコーヒーを飲む。
こいつに任せておけば機械の類はどうにかなりそうだ。あとは警備員。
人間相手の戦闘は俺もプロだ。だが元同僚のいる部隊が出てきたら嫌だな。
そんな事を考えながら作戦を練っていった。
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