頭痛持ち
頭が
頭痛を抱えて身体を起こす。別に二日酔いって訳じゃねえ。ドラッグの副作用でもない。ただの持病だ。
事故で大手術を受けた際になにかミスがあったのか、それともよくある副作用なのか知らないが、頭痛持ちになっちまった。
原因を調べてもらっても不明。別の病院で精密検査を受けても不明。まだまだ人間の身体には不明な部分が多いらしい。これ以上の検査は保険適用額の限界になりますよ、と宣告され、諦めざるを得なかった。
鎮痛剤を飲む。これでしばらくは
ギシリと安いベッドが音をたてる。クスリが効いてくるまでの不機嫌な時間も毎朝のことだ。シャワーを浴びて、着替えて。ポケットには
「あいかわらずひでえツラしてるな」
「うるせえ、事故からこっち、このツラと付き合ってかなきゃいけねえんだ。代わりたいか?」
「お断りだね。不機嫌にしか見えねえんだ。もうちょい愛想ってもんを持てねえのか」
「現場に表情筋を置いてきちまったからな。そりゃ無理だ」
「ぬかせ。今夜、あいてるなら飯でも
「機嫌は悪かねえが、
「俺もしばらく
軽口を
「だからB定食にしとけって言っただろ」
おっさんがこっちを指差して片眉を上げる。うぜえ。
「いいんだよ、たいして量を食えねえんだから。
「そりゃそうだけどよ。せっかくの
「いいの」
割り箸を割りながらこっちにツッコんでくるおっさんを片目にこっちはプラスプーンを取る。
「今日は洋食の気分だったんだ」
まだ
「ならいいんだけどよ」
どうも職場では事故以来、腫れ物に触れるような扱いをされているが、このおっさんだけは態度を変えない。こっちも気楽だからいいんだけれど。
ほとんどロボットにしか見えない完全義体になった女の私を、生身の頃と同じように接してくれるのは、このおっさんも義体化率が高いからだろうか。
「うちの娘も内臓疾患でずいぶん前に義体化してるんでな」
と聞いたのは翌朝のことだった。
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