防犯業
「新しいお客さんだ。お前行ってこい」
上司にそう言われてホームセキュリティの見積もりにやってきた。
閑静な住宅街。
本物の金持ちはこんな
俺みたいな
だからいい暮らしというと
道のりは遠いなあと思いつつ顧客の家を観察する。高級モビリティが
絵に描いたような高級住宅だ。こんなところを担当するのか。初めてだな、この規模は。
/
「ではセキュリティ一式を最新型に、ということでよろしいですか」
「はい。家族三人暮らしで越してくる予定で。古いシステムをそのままは怖いと聞きますし」
「そうですね。合い鍵を作られているかもしれないという心配もあります」
「ですよね。なのでお任せしたいと思いまして」
「早急に見積もりを作らせていただきます。そのために室内を拝見できますか。見取り図があれば入らなくても、見積もりまでならやれますけれど」
「引き渡してもらったばかりで片づいてないのが恥ずかしいんですが、どうぞ」
「ここの窓は木が近くて経路になるか?」
室内を見て思ったことを口に出す。見積もり用のメモ代わりだ。依頼者に許可を得て、測量ドローンも走らせている。これで見取り図より精密な現場の記録が取れる。
3D化した家の中に防犯カメラやセンサーを配置してシミュレートできるのが便利。設計とテストがほぼ同時にできる。完成版をAIや
ぶつぶつ
見た目は不審者だがやっているのは脳内でパズルを解いているようなもの。それも予算内でどうやって納めるか、どこまでやるのか、という条件によって変わる最適解をいくつも出して選別する作業。
ヘルメットの環境ロガーと測量ドローンで屋内の情報収集を済ませた。基本的にはいかに侵入させないか、が重要だ。それが不可能だった場合はパニックルームに逃げ込み、セキュリティが駆けつけるまで隠れることになる。
さすがに高級住宅、ざっと見ただけでは分からないパニックルームも完備されていた。独立系のセキュリティと電源に非常食類もばっちり。ドローン測量したデータを眺めてもまず分からない狭いスペースだった。
後は屋外の確認だ。家屋や庭木の配置、室外環境、各部の距離。見るべき所はいくつもある。侵入しやすそうな場所、目立たない場所、隠れられる場所、道路の防犯カメラ位置。それらから侵入経路を考える。
「
「
「ではよろしくお願いします。本日はお時間をいただきありがとうございました」
「いえ、お世話になります」
さて、今夜は寝られなくなりそうだ。
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