第247話【ラグベール過去編】宮廷魔術師ハンク




ラグールは魔人である。





常世、幽世などと呼ばれる次元を彷徨う存在だ。

元よりこの世界と交わることのない存在だが

誰かが戯れで描いた魔法陣より

中途半端な存在として顕現したらしい。



飢えることはないが

人間の魔力臓器をたまに喰らっていた。

人間でいうところの飴を食べるようなものだ。



魔術の手ほどきは、気まぐれだった。

が、男の成長は、目覚ましかった。



魔法の特性と原理をよくよく理解し

どの属性の魔法もこなして見せる。




数年後




顔を魔法で変え、

元の名も捨て『ハンク』と名乗った。



ホビルの城に王との謁見の間に男は立つ。




「ハンク、あの魔獣をたった一人で退治するか・・・流石だ」




大臣は大げさにハンクを褒め称える。

内心こちらを見下しているのが見え見えの世辞だが、気にはすまい。


こちらが不浄人とやらだと知ってか知らずか

ホビル王とかいう男は、利用価値があるとわかるや否や手のひらを反す。




「よくやった、今後もお前に仕事を頼みたい」




「かしこまりました」






$$$






「なぜあの魔力をカスほども感じぬ男に、こうべを垂れる?」




廊下の影から

ワシはハンクに話しかける。




王に頭を下げるのは当然だ。




「ならばお前が王になればいい、あんなクズのさばらせておく必要などないのだ」




「俺はただの人間だ」


だから、国を壊すとか、

王を倒すとかそんなことは及びもつかない




「いや、貴様は選ばれた人間だ」




「違う」




・・・




「・・・好きにしろ、ワシは食事をしてくる」



「食べるなら、罪人だけにしておけよ」



「ワシに指図するな」




「・・・」




「いや・・・これは命令だ」


ハンクが発動させた魔術でワシの存在が揺らぐ。




ぐ・・・




「次俺の命令が聞けなかったら、即刻封印するが?」




貴様・・・




ハンクは、ワシの弱点までもその時点で看破して見せた。

つながりを切られてしまえば、この世界へ干渉できなくなる。



魔人が人に命令されるという屈辱



だが、正直、

怒りよりも・・・

奴の底知れぬ才能に・・・どこか『嬉しさ』を覚えていた。




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