第221話【エレノールさん編】経験や知識ならば・・・
エレノールは詳しく話を聞く。
ウツロさんが余ったというのは概ねこういう事らしかった。
・魔力5であり、魔法障壁を展開できず時間稼ぎの壁役として使い辛い。
・魔法協会に所属するまで西の国に居たらしく、クラスティアの常識に疎い。
「少しサボる傾向にあるが、悪い奴ではない。謎にスライム討伐が上手い奴だったな・・・謎だったが」
つまりはだ。
彼は組織にとって不適合品と判定されてしまったのだろう。
そして、それは・・・
今の、この私エレノールにも言えることだ。
(なんだか、『組織の窓際』に追いやられてしまった気分になってきましたね)
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ウツロは考える。
ミストクラノスを出発して1時間ほど
ウツロは徒歩で黙々と歩く。
辺りの灰色の霧はますます濃くなっていく。
『なぜ一人なのか』
そこに関して、言及はなかった。
・・・
ウツロはそれについて質問しなかった。
言われなかった事を聞くことが躊躇われた。
酷い理由だったら、傷ついちゃうだろうが・・・
聞く必要のないことなら、聞くだけ無駄だ。
そう、ビビってるんじゃない、面倒なだけだ。
霧は、ますます深くなる。
足元を見ながら一歩一歩進んでいく。
知らない土地
たったひとり・・・
・・・
『未知』とはわくわくする言葉だろうか?
いや、俺にとってそれは恐怖の意味合いが強い。
知らなければ、簡単に死ぬ。
『初見殺し』を看破できるほど、俺の手数は多くない。
目的地近くで霧が少し晴れる。
広い平原が目の前に続く。
見通しの良くなった場所で目的の魔獣を視認した。
本日の任務:疾風ウサギ複数体の討伐
膝下くらいの大きさのそれは、
ウツロにとって初めて相対する魔獣であった。
攻撃力は低いが
目に留まらない速さで動いて、岩場を跳ねまわる魔獣だったか・・・
フッ
間一髪、魔獣の体当たりを避ける。
(なんつー速さ、眼に映らない)
これはヤバい。
急いで岩場の影に隠れる。
追ってこない・・・岩に激突するのが怖いのか?
(ならば・・・剣を構えつつ、岩を背にして・・・そこだ)
ウツロの放った風切りは、あっさりと
「・・・」
(ああ・・・詰んだな・・・)
本には、
魔術障壁を大きく展開して囲い込むのがセオリーって書いてあったっけ
そんなことはとてもとてもできないが・・・
そして、疾風ウサギはこの辺りでは雑魚らしい。
そんな魔獣でさえ討伐出来ない自分・・・
岩場の影で、魔法の書を開く。
悪い報告でも、ちゃんと報告をしなければならない。
魔法の書を綴る手が震える。
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エレノール:事情はわかりました、ならばこんな方法はいかがでしょうか?
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ウツロは再び疾風ウサギの出現する平原に立つ。
剣を前に構える。
息を長く吐く。
ウツロを視認して、間合いを測る疾風ウサギ
そして、目の前から消える。
と同時にウツロは自分の首元から背後に剣を突き立てる。
ドンピシャで、首を狙いに来た疾風ウサギに剣は刺さる・・・
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+++++++++++++++++++
ウツロ:エレノールさんに提案してもらった方法、とても役に立ちました。
エレノール:いえいえ
ウツロ:本当にありがとうございます。
エレノール:ウツロさん、困ったことがあったら何でも相談してください。
経験や知識ならば、私が補うことができますからね。
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「・・・」
その言葉は、普段無表情のウツロの口角が
少し にんまり してしまうくらい 嬉しいものだった。
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