第710話 わかさぎ釣りで九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
ウィンタースポーツなんて寒いだけじゃないですかヤダー。
桜のそんな訴えも虚しくとんとん拍子に話は進んでいく。コヨーテちゃんがそそのかし、加代ちゃんがたきつけ、ダイコン社長がトリバ〇を決める。
かくしてもうすぐ春ですねという季節にも関わらず、桜君たちは北海道に旅立つことになってしまうのであった。
はたしてウィンタースポーツ音痴ことウんちの桜は無事に本土に帰れるのか。
◇ ◇ ◇ ◇
「のじゃー、まさかまさかの雪景色、ワカサギ釣り一本勝負とは恐れ入るのじゃ」
「いやー、流石にスキー系のツアーはもうなかったわ。シーズンオフ。暖冬だったからね。けどまぁ、コヨーテちゃんが楽しそうでなにより」
「ワーオ!! スノー!! アイスレイク!! アナ雪の世界デース!! ヒアウィーゴー!!」
「それマリ〇じゃねぇ?」
はいと言う訳で、俺たちは湖の上。
四人そろって穴に向かって糸を垂らしてフィッシュ待ちをしておりましたとさ。
いやはや、まさかのまったり系ウィンタースポーツに、俺もほっこりですよ。もうね、スポーツなんてする歳じゃないんですよ。明日のことを考えるとね、無理のできない年齢なんでごぜえますよ。
ですのでありがたい。座ってできるウィンタースポーツありがたい。
ただめっちゃ寒いのだけはどうにもならないけれど。
「はいーはーい、釣ったら早速持ってきてくださいね。このスーパーコック、難波前の旬こと前野さんが美味しくフライにしてあげるから」
「んで、前野もいるのな。連れてこなくていいのに、こんな騒がしい奴」
「かわいそうやん仲間外れは。いくらワイとキャラが被っているからって」
「ところでシャッチョさん!! やっぱり北海道に来たからにすすきのですよね!! すすきのの街でくまなく遊んで、それから北三条でスナックバス〇を探すんですよね!!」
「探さねーよ!!」
ほらこんなややっこしいことになる。
やれやれ、ほんと、大所帯での旅行になったもんだ。
まぁ、それでも当初の目的は果たせている。
頬を真っ赤にしながらもはしゃぐ加代さんとコヨーテちゃん。二人並べば、何やら姉妹のような愛らしさがある。そんな感じの女の子が、楽しそうに湖に糸を垂らして笑っているのだ。
まぁ、そのために骨を折るのは大人の役目ってもんでしょう。
「よくやったよダイコンの」
「まーなー。というか、普通にコヨーテちゃんしつこいよってにな。あそこで折れとかへんと、ちょっとどうなるか分からんところがあったでしかし」
「なんだかんだで面倒見いいよな。好きだったりするの」
「んー、手のかかる妹って感じやな。妹おらんでわからんけど。けど、ワイはロリやからそうういう感情はナッシングやで。安心しいや」
そうなのかい。
結構いろいろと親身になって世話しているから、もしかしてと思っていたけれど。
そうか、やっぱりそっちに操を立ててしまうのか。
悪い子じゃないと思うんだがな。いろいろと頭は悪いけれど。コヨーテちゃん。
けれどもまぁ、いいさ、こいつが選んだ人生だ。
「ならそれでいいさ。好きなようにやれよ、ダイコン」
「いわれんでもそうするっちゅーねん。いつか理想の合法ロリっ娘とゴールインして、みんな驚かしたるさかいな。楽しみにしときや」
「若い目のお店がいいんですね!! 分かりました!! 予約しておきます!!」
せんでいいからと前野にツッコミを入れておく。
ほんと、ちょっと油断するとすぐこれなんだから。
なんてことを思っていると、俺の竿がぴくぴくとヒク。
どうやら当たったらしい。
ゆっくりとリールを巻きあげながらふとダイコンの方を向く。
「……しっかしまぁ」
「なんや桜やん」
「ほんと、お前、なんていうか、黙って釣りさえしていれば男前なのに。どうしてこうなっちゃうのか。不思議でならねえよなぁ」
「なんのこっちゃやで!! ワイは何しててもいつも男前やろが!!」
いやまぁうん。
今回ワカサギ釣りということで、一番心配だったのがお前のルックスなのよ。
あんまりにもそのままなのでなんというか、心配を通り越して逆に安心感しかありませんよ。
今日もばっちり魚〇さまやってますね。
これで大物釣りなんてやりだした日にはどうなっていたことか。
いやほんと。
「ワカサギ釣りって最高なスポーツだね」
「のじゃ。尻尾フル回転で、全力で釣るのじゃ。この湖の魚をすべて釣り上げる勢いでやってやるのじゃ」
「イエス!! フィッシュハンターデース!!」
まぁ、ちょっと限度はあるけれど。
流石にそれはやりすぎ。加減してつかぁさいと、俺は加代さんに尻尾を引っ込めさせるのだった。
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