第565話 なのちゃんが夜なべをしてで九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
おめでとう。桜は無事に稲の束を手に入れた。
「……のじゃ、今週のあらすじなんだか淡々としすぎてないのじゃ」
「いやまぁ、あらすじって本来簡潔にまとめるもんだし、そんなものじゃねぇ?」
「きっと作者さんも疲れてんのや。文章の表現が荒くなったりとかそういうのから察するのも、人間力いう奴やで」
人間力、おねがいします。(仕事は定時上がりですが、そのあといろいろやっているのでけっこういっぱいいっぱいです)
◇ ◇ ◇ ◇
さて。
タナカに魔法の真偽について問いただすという次のクエストこそ発生したが、稲束の採取には無事に成功した。
稲俵を抱えて街に戻ればさながら凱旋。
道行く人たちの、なにしてんだあれという目を受けながら、俺たちは自宅へと戻った。
「なのちゃんただいまー」
「ただいまなのじゃぁー」
「なのちゃん、ワイに会えへんくて寂しくなかったか!! 寂しかったやろう!! ええねんで、いつでもワイの胸で泣いてくれて!!」
胸なんてあったのかダイコン。
お前、胸と股との間が限りなく狭いから、胸を借りたら股に当たって、いろいろとあられのないことになるんじゃないのかダイコン。
卑猥だから切除しましょうねと、俺はすぐに大根を上下に砕いた。
やれやれ、俺も手刀が上手くなったもんだ。
「なにするんや桜やん!! こんな!! こんなスプラッターダイコン、子供に見せたらあかんやろうが!!」
「うるせぇ、ナチュラルにセクハラしようとしてんじゃねぇ!!」
「なの!! 加代おねーちゃん、桜おにーちゃん!! おかえりなのぉ!!」
「きゅるくるぅん!!」
「……なのちゃん。ワイも、ワイもおるで。おるんやでなのちゃん。無視せんといてんか」
すっかりとダイコンのあしらいかたを把握しているなのちゃん。
そう、変態には近づかない、反応しない、相手にしないが一番効くのだ。
よく言いつけを守って偉い。
流石はなのちゃんというものである。
俺が二束、加代が六束。
ついでにダイコンが一束と、持って来た藁束をぼふりと部屋の中へと転がす。おぉとなのちゃんが声をあげて、それからその瞳を輝かせた。
どうやらお使いは彼女の希望にそう結果になったらしい。
「なの!! よくこれだけのものを短期間で集めることができたの!! すごいなの!!」
「いやいや、まぁ、いろいろとあってねぇ」
「のじゃ。思わぬ助っ人が現れたのじゃ」
「詳しくは話せへんねんけどな。まぁ、せやから、割と大冒険やったんやで?」
エルフキングのことについては、説明しないことが吉と見た。
あの褌エルフについて、なのちゃんが知ればどういうショックを受けるか分からない。ドラコは大丈夫だろうが、なのちゃんにトラウマを植え付けてはいけない。
ふんどし一丁のむくつけきエルフが、エルフの森を支配している。
それは、俺たちだけの秘密としておこうじゃないか。
そんなことを思っている俺たちの前で、なのちゃんが稲藁をせっせと解く。
どうやらもう作る気まんまんらしい。
既に日が暮れるっていうのに。
随分とやる気になったものだ。
ふふっ、子供らしいというか、なんというか、元気な事である。
「そんな急いで造らなくても大丈夫だよなのちゃん」
「のじゃ。タナカにはいろいろと聞かねばならぬこともあるのじゃ。なのちゃん、そんな急がなくて本当に大丈夫なのじゃ」
「なの、けど、善は急げなの。超特急で、明日の朝までにつくっちゃうなの」
そんな夜なべまでして作るほどのものじゃないよ。
いや、本当にやめてと、俺と加代が食い下がる。
しかしなのちゃん一歩も引かない。俺たちの声に耳も貸さずにもくもくと藁人形を作り始めたではないか。
うぅん。
なのちゃん、意外と頑固な所もあるんだなぁ。
いや、頑固というか、子供っぽいというか。
なんにしても――。
「こうなっちゃったら止められないなぁ」
「のじゃぁ。疲れて寝てくれるのを信じるしかないのじゃ」
「子供は一度集中し出すと止まらんからな。まぁ、仕方あらへんで。ほんま、明日の朝に頼まれた分、できあがっとるかもしれへんな。それはそれでまぁ、仕事がはよ終わって御の字やないけ」
御の字かねぇ。
どうだろうかフォックスと俺と加代は首をかしげる。
しかしながら、なのちゃんがしたいのならば止めることはできない。
好きにさせてやるのがうちの教育方針。
あれやこれやと彼女に言う気にはなれないないのだった。
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