第525話 運命の再会で九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
女神の煽りに乗せられて、異世界のコンテストに参加することになった桜くん。
しかしながら、コンテスト参加中は衣食住の保証アリ。快適な生活を約束してくれるというホワイト条件に、思わず毒気を抜かれることになるのだった。
そして同時に、あんなにイキっていた女神に対する感情も多少和らぐ。
「ほんと、多少だけれどな。付け焼刃。腐ったどぶ川から立ち上る異臭が気にならなくなったくらいだけれど」
「のじゃぁ。基本クズ女神という認識について、
「……ひでぇ言われよう」
ディスっていた大根太郎もどん引く評価の低さ。
果たして、アネモネちゃんの女神力の明日はどっちだ。
「「まぁもう、出てこないだろうけれど……」なのじゃ……」
◇ ◇ ◇ ◇
指定された宿に俺と加代とダイコン、そして、フードを目深にかぶったなのちゃんと、なのちゃんの力で掌大に小さくしたドラコを連れて入る。
流石の植物モンスター。
形態を大きく変えることができるのが助かった。
家を失った俺たちだが、なんとかその晩の泊まる宿は確保することに成功。
ほっと一息というものである。
「いやー、一時はどうなることかと思ったけれど、なんとかなったなぁ」
「のじゃぁ。無事に夜を越すことができて一安心なのじゃぁ」
「なの。桜お兄ちゃん、加代お姉ちゃん、なのたちのためにありがとうなの」
「きゅるーん、きゅーん、きゅくーん」
「ええんやでなのちゃん。子供を守るんはワイら大人の役目やからな。なんも気にせんでかまへんのやで。かまへんかまへん。かまへんけれど、かまーんはしてええんやで。さぁ、ワイの逞しい股に飛び込んでおい――」
「ここ、なんていうか、宿屋にしてはオブジェがなくて寂しいよな。ダイコンでも花瓶に刺しておくか」
「のじゃのじゃ、いい案なのじゃ」
ずぼり、通された宿屋の部屋の窓際にダイコンを突き刺す。
もるばと叫んでさかさまに直立し、スケベな足を天に向けるダイコンに、俺と加代は冷たい視線を送った。
そう、子供を守るのは大人の役目。
まずは悪いダイロリコンから守らなくっちゃな。
しばらくそうしてろこのタコスケが。
しかしまぁ、大したコンテストもあったものである。
宿屋を一つ貸し切って、大会までの宿舎にしてくれるというのは素直に助かる。
しかも温泉付き。
普通の宿屋は床で雑魚寝が基本らしいが、ベッドまでついてくる好待遇。
しかも人数分だ。
これは大したもんだなぁと、俺は加代と素直にそのもてなしぶりを喜んだ。
「のじゃのじゃ、旅の疲れをいやすのに丁度いい宿なのじゃ」
「だなぁ。思い返せば、旅から帰って来てからこっち、まったく休みなしだったからな」
「のじゃ、思わぬ怪我の功名と言う奴なのじゃ」
んじゃまぁ、ダイコンとなのちゃんの世話は加代に任せて、俺は骨休めでもしてきましょうか。
こうみえて、温泉とか健康ランドとか、そういうのに目がないんですよ。
ふらり立ち上がり部屋を後にする俺に、加代はいってらっしゃいなのじゃーと気軽に声をかけた。
さて。
「異世界温泉とはどういうものか。むふっ、期待が膨らみますなぁ」
「女湯もあるんかなぁ桜やん。その時は、ワイの身体を砕いて、ダイコン風呂の元にして流してください。私はダイコン塊になって、女体の周りにいます」
「なに詩的なことをいいながらさらっと復活してんだおめーは」
誰がそんなことをするかと、しれっとついて来たダイコンをしかりつける。
すると、そんな油断がよくなかったのだろう。通りの角から出てきた人間と、ごちんと体をぶつける羽目になった。
おぉ痛てて。
尻もちをついて倒れるほどに硬い相手。
武闘大会に参加する人間なのだから、そりゃガタイの良い奴らが多いのだろう。
そんな奴らと十字路でぶつかるなんてとほほツイてない話もあったもんだ。
「いやすまない。大会で浮かれていた。怪我はないか?」
「こっちも悪い。ちょっと温泉でテンションが――って、あれ?」
なんだか耳に馴染みのある声がする。
ふと顔を上げればそこには、馴染みのある顔がきょとんと俺をみつめていた。
そう、その顔を俺は知っている――。
「シュラト!?」
「おや、桜どの!?」
先程別れたはずの男。
黒騎士シュラト。
その人であった。
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