第500話 絶技カタクリ走りで九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
ある日、森の中、小暮でもないのにデーモンに出会った。
「SATSUGAI!!」
「「ゼロ年代の伝説っぽい感じの人が出てきたぁアアアアア!!」」
ほんと、DM〇は最高ですね。
◇ ◇ ◇ ◇
「おーい、しっかりしてくれ、君ぃ。そんな驚かなくてもいいじゃないか」
「しっかりするんじゃ、お前さん。それとダイコンの」
うーん。
爺となんだがなよなよとした感じの男の声がする。
俺はいったいどうしたんだ。
そんなことを思いながら目を開けるとそこには――。
「よかったようやく目を覚ましたみたいだね。心配したよ」
「……巨大な猥褻物陳列罪!!」
「どうやら錯乱しているようだね。すまない、誰も居ないと思って必殺技の練習をしていたんだが、バルサどのに加えて君たちみたいな一般人まで来るなんて」
「……さらに、饒舌に喋る猥褻物陳列罪!!」
どす黒くて野太い猥褻物陳列罪頭がそこには立っていた。
そう、なんていうかそう、中の人っぽい感じのそんな感じで。
しかもそこはかとなく、喋り方がお洒落な感じで。
なんてことだ、異世界でこんな見事なふかわ〇ょうをお目にかかることになるだなんて。しかも、話の流れからして、さっきの世紀末男の中身だなんて。
「なんて世紀末だ!!」
「おぉう!? 元気いっぱいだねぇ!?」
「なんじゃ、心配するほどでもなかったのう」
マッシュルーム男とお爺ちゃん団長に引き起こされて立ち上がる俺。
とりあえず目を瞬かせると、ばちりとマッシュルーム男がウィンクをして、俺に向かって手を差し伸べてきた。
うぅん、この絶妙な腹の立つ感じ。
限りなくそれっぽいぞ。
「はじめまして。僕はカーネギッシュ。中央大陸連邦共和国騎士団第二部隊の団長をしている男さ。すまないね、驚かせてしまったみたいだ」
「……カーネギッシュ」
「おや、ピンとこないか。割と名前が通っている自信があったんだけれどね。それならあれだ、二つ名を――ヨハネ・クレンザーⅡ世という」
「……ヨハネ・クレンザーⅡ世!!」
完全にあれやんけ。
説明の必要すらないくらいに完全にあれやんけ。
やめろや。
俺は耐えきれずに顔を覆った。
あまりの懐かしネタ、俺たちの世代のハートをぶち抜くパロネタに、俺は耐えきれなくなって顔を覆った。
そしてそんな俺の顔を、歩いて喋る猥褻物陳列罪が覗き込む。
「どうしたんだいそんな顔を隠して。何か困ったことでもあったのかい」
「いいえ、何もありません、何もありませんから、どうぞ気にしないでください」
「……気にしないでと言われても。君、そういうのはよくないよ。困っているなら困っているとちゃんと助けを求めないと。それともそんなに僕が頼りなく見えるって言うのかい」
いいえちっとも。
すごく……大きいです。
そんな返しをしてしまいそうで、俺はちょっと貴方を正視できない状況に陥っているんですよ。その辺り、ちょっと察してくれると助かります。
ちくしょうぐいぐい来るなこの歩く猥褻陳列罪男――もといカーネギッシュ。
バルサさんといい、カーネギッシュさんといい、この世界にはいい人しか居らんのか。
なんだか負けた気分になったところを咳払いで強引に締める。
こんなやりとり続けたって不毛なだけだ。
はい、パロはお終い。本題に入ろう。
「すみません、取り乱しました。あまりの気迫に圧されてしまって」
「はっはっは、そんなにだったかい。いやぁ、参ったな。僕はお洒落に剣を振るっているつもりだったんだが。そんな威圧するほどのオーラを出しちゃってたか」
「必殺技と言っていましたけれど?」
「あぁ。
そう言って、カーネギッシュは赤い刀身の剣を握りこむ。
それから彼は大きくのけぞると、まるで剣を杖のようにして地面に突き立てて――。
「ぬふぅ!!」
「ぶほぉお!!」
無明が逆さに流れる感じの、そういうポーズを取ったのだった。
そう、むーざんむーざんな感じの必殺の構えを。
「絶技カタクリ走りと名前は決まっているんだけれど、これがなかなかうまくいかなくってね。今一つ滑りが足りないというか、抵抗が大きくなっちゃうって言うか」
「抵抗が大きくなれば大きくなるほど、斬撃の速さが上がるだけに考えものじゃ」
考えものなんだけれど、考えなくちゃならないことなんだけれど。
もっと他に考えることがあるだろう。
この世界はなんだ――俺たち三十代を殺しに来ているのか。
「うぅんーん、ジャン、ジャンクロード!! 貴方のために歌うことが!!」
「んでダイコン!! お前もナチュラルにそういうネタ使うんじゃない!!」
懐かしみで死んでしまうわ。
俺は横隔膜が痙攣をおこしそうになるのを堪えながらツッコんだ。
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