第492話 大根パワーで九尾なのじゃ

【前回のあらすじ】


 謎の子供はやはりこの世界の神の一柱であった。

 たりらりらーんな神はその名を――アッカーマンという。


「のじゃ。これ、本当にいろいろ大丈夫なネタなのじゃ?」


「大丈夫じゃないだろ。なんで小説なのに漫画の方の神様が出てくるんだよ。ていうか、もしかしてこの世界の神様って――」


「たりらりらーん。それ以上言ったらダメなのだ。漫画は読んでも、小説はあんまり読まない作者が書いてる時点でお察しなのだ」


「「「あっ」」」


 あっ、じゃねえよ。

 いいじゃんかよ、別に、漫画はそれこそオッサムからミッテルまでいろいろと見ているんですから。それくらい許してやってつかぁさい。


◇ ◇ ◇ ◇


 アリエスちゃんが魔法の杖を握り締めて声を震わせる。

 神の名を聞いた途端その反応である。かわいい所はあるが、どこか超然としている感のある彼女が震える。その姿に、俺は妙な不安を感じてしまった。


 彼女をここまで震えさせる。

 トリックスターと言ったが、それほど凄い神なのだろうか。


 というか、トリックスターってなんだ。


「のじゃ。トリックスターとはまたやっかいなのが出てきたのじゃ」


「けど清楚系だよね見た感じ。ワイは全然ありよりのありやで。男の子でも女の子でもオールオッケー、受け入れ準備万全や。おちんち〇ランドでも開園したるわ」


「というか、お前ら二人は知っているのか、トリックスターって?」


 加代と大根太郎が顔を見合わせる。

 何を言っているんだこいつはという視線が飛んできて、ちょっとばかりぎょっとした。いや、そんな知らないなんておかしいだろという表情をされても、こっちも困ってしまう。


 知らないのは知らないのだから仕方ないだろう。

 開き直りたくなるのを我慢しながら、俺はどうか教えてください加代ちゃんさまと、同居狐に頭を下げた。


 やれやれと少し優越感を滲ませて、加代の奴が俺の方に視線を向ける。


「のじゃ。まぁ、所謂物語の狂言回しポジションの神様なのじゃ。単純に、善神や邪神で切り分けることができない、物語の場面場面においてさまざまな役目を果たす神様を指してトリックスターと呼称したりするのじゃ」


「北欧神話のロキ、さっき言ったココペリ、日本神話だとスサノオやオオクニヌシなんかがそれにあたるな。主神格ではないけれど、神話を語る上で避けて通ることのできない物語の鍵を握っていることが多い。割と重要な神さまやで」


 じっと二人がこっちを見る。

 何故だろう、その視線が妙に痛い。


 そう感じるのは無理もない。あきらかに二人がこちらに向ける眼は、猜疑の思念を含んでいた。


 ――うぅむ。


「のじゃ、もしかして、さっきの説明で分からないのじゃ?」


「あー、いやー、そのー」


「割とメジャーな神様言うたつもりやで。分からへんのか桜やん?」


「いや、流石に知ってるよ、スサノオくらい。あれでしょ、タ〇ルが乗って戦うロボットでしょう?」


「「無茶苦茶知識が偏ってる!!」のじゃ!!」


 え、それ以外にスサノオってありましたっけ。

 知らない子ですねという感じの顔をして空とぼける。


 やれやれ、こちとら学ナシの専門学校出身プログラマーでごぜーますよ。そんな日本神話だ北欧神話だなんて知っている訳がないじゃないですか。


 お前、お稲荷さんくらいしか知らないってぇの。

 だいたいそんな神様なんて、神社にでも参ったならともかく、覚えている訳ないじゃないか。無茶なことを言わんでくれ、まったく。


 ぷんすこと俺がむくれ面をする。

 しかし、加代と大根太郎がどんよりとした空気を醸し出す。

 だからそういうのやめてという感じで更に眉根を寄せると、さっとその間にアッカーマンが入って来た。


「まぁ、知らないモノは知らないのだ。こういう時は、知ってるモノで例えてあげるのが適切なのだ」


「おぉ、親切!! 流石神様!!」


「なにで例えて欲しいのだ。知っている作品を上げてみるのだ。大丈夫、神様だから異世界を横断して、文化には理解があるのだ」


 そいつは上々。

 俺は少し考えて、それから――。


「ポプテピ〇ックで例えてください」


 そういや最近、忙しくって漫画もまともに読めていなかったことを思い出し、そんな漫画の名前を口走ってしまうのであった。


 ポプ〇ピピック。


「あれは全員が狂言回しみたいなものなのだ」


「……なるほど。つまり、あんな感じの狂気の神様ということなんですか」


「そういうことなのだ」


 なるほど。

 こいつは間違いなくろくでもねぇぜ。

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