第447話 あ、これ、ほのぼの系で九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
ざんねん、またぽやぽやしていた桜くんは、モンスターにイニシアチブを取られてしまったのだった。
「うわぁーっ!!」
「のじゃぁーっ!!」
「かんべんかんべーん!!」
はいこれトンチキアドベンチャー。叫び声からしてやる気の感じられないこの感じに、次の展開はなんとなく読めるのであった。
「というか、タイトルでもう展開モロバレなのじゃ!!」
そういうこと言わない。
◇ ◇ ◇ ◇
向かってくる草編みドラゴンと座敷草鞋。
座敷草鞋は少女みたいだから襲って来られてもなんとかできそうな感じがある。だが、草編みドラゴンが厄介。こんなん勝てるかという体格で猛然とそいつはこちらに駆けてくる。
わぁ、寄るな寄るなと、檜の棒を振り回す気も起きない。
ジュラシック〇ーク。巨大な恐竜にいきなり迫られる恐怖を、テーマパークでもないのに味合わされた俺は、失禁寸前、白目を剥きそうになるのを必死にこらえた。
ぴたり、まるでそれこそ映画のように、俺たちの前で停止する草編みドラゴン。
息遣いはないが、青臭い草の匂いが漂ってくるその中――にょろり、緑色をした舌のようなものが、俺の頬を撫でた。
あかん、もう、これはあかん。
見ると隣で加代さんが白目を剥いている。
歩きダイコンは死んだふり。いや、八百屋に並ぶ大根のフリをしていた。
お前ら、もうちょっと頼りになってフォックス。
いざとなったら狐火飛ばすんじゃなかったのかよ加代さんと、情けない気持ちになるその前で。
「あなた!! あなた変わったお仲間なの!! お名前はなんていうのなの!!」
「……へ?」
次いで、きゅーん。
まるで大型犬が甘えるような声を、草編みドラゴンが上げる。
あ、これ、あれや。
異世界転移して、なんかこう、ほのぼのスローライフをするタイプのあれや。
途端にどっと肩にかかっていた重荷が落ちたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
「なるほど、人間さんなの。そして、この家を渡してほしくてやって来たの」
「あぁ、そういうことなんだ」
「のじゃ。話せばわかるモンスターだったのじゃ。というか、仲間になる率高すぎじゃないのじゃ?」
「おいおい、俺は元人間の転生者だぜ? お前、モンスターと一緒にするなよ?」
「けど今はなんの役にもたたない、八百屋の前に並ぶ大根だろう?」
おいおい勘弁してくれよとおどける大根太郎に白々しい目を向けて、俺はため息を吐いた。ほんと、ことが終われば調子がいいんだから、この大根野郎は。
そりゃさておき。
「けど、ごめんなさいなの。私も、この子も、行くところがないの。ここのお家を出ていくことはできないなの」
「のじゃ」
「外に出たら、人間さんに討伐されちゃうの。それに、ここは日がよく当たって、栄養がたっぷり手に入るの。優良物件なの」
「あぁ、家の周りにびっしり張り巡らされた蔦って」
「私の体の一部なの。もっと力の強い
それでも家一つ、まるっと包んじまうくらい成長しているんだからすごいもんである。
いやはや、トンチキアドベンチャーと思わせて、意外にすごいモンスターが序盤から出てきたものだな。
ただまぁ、そんな感心をするよりも、今はもっと考えることがある。
「うぅん、こうして命を救われて、お願いされちゃうとなると、流石に困るよな」
「のじゃ。情が移っちゃうのじゃ」
「だからモンスターと仲良くしたらダメやいうたやろ。ほら、そういう所やで自分ら。あれ、なんなん、その、お前が言うかみたいな視線。やめてや、ほら、ワイ、中身はまぎれもなく人間やから……」
この
うぅむと唸った俺たちの前で――。
「そうなの!! だったら、一緒に暮らすっていうのはどうなの!!」
名案なのと
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