第444話 歩きダイコンで九尾なのじゃ

【前回のあらすじ】


 突入した廃墟で遭遇した歩きダイコン。

 彼はなんと、桜たちと同じ異世界からの転生者なのでした。


「ま、名前は生前も大根太郎ともうしましてね」


「「おはぁーっ!! また危ないパロディ!!」なのじゃ!!」


 普通にいそうなもんですがね、大根太郎。

 しかしまぁ、うん。


 やめようや。人が楽しんで書いてるもんに変なあだ名つけんの。


「「ネタにしといてそういうこといいます!?」のじゃ!?」


 思いついたからやります。

 やりますけど、あんまりそういうの好きじゃないです。

 楽しんでいる人がいるんだから、そっとしといてあげましょうよ。


◇ ◇ ◇ ◇


「おっほ、なんだ君らもあの駄女神に飛ばされた口かい。いや、酷いよね、彼女。僕もやられた口だけれど、こんな無責任に異世界にほっぽり出されるなんて、聞いてないよってもんですよ」


「ほんとだよ!! なんかもっと、サポートがあっていいもんじゃないの!!」


「のじゃ!! そうなのじゃ!! あの女神、本当に駄女神なのじゃ!!」


 歩きダイコンは気が合った。

 そりゃもう、怖いくらいに俺たちと気が合った。


 そりゃ合うだろう。だって俺たちと同じ異世界転移者だし、なにより、あの駄女神の被害者の一人だったのだから。


 のわっはっはと、ダンジョンと化した家の中で語らう俺たちと歩きダイコン。

 まるで古なじみの友達のように、俺たちは打ち解けあっていた。

 それというのもぜんぶぜーんぶ、あの駄女神のトンチキのおかげでございます。


 ほんと、今度会ったら覚えとけや。


「しかもね、チート能力手に入れたんだから、人間の体はいらんだろう、いうてね、モンスターに転生させよったんですわ。ありますか、そんな駄女神。今どきそんなハードモードで異世界歩ませる奴。頭おかしいで、あの駄女神」


「なんのサポートもしやがらねえしな!! どうかしてるぜ、あの駄女神!!」


「ほんと駄女神なのじゃ!!」


 そしてこれだけディスっても出て来ない辺りに、あの女神の性悪さを感じる。

 今後も絶対に出て来ないのだろう。

 きっとそうに違いない。


 そしてちゃっかりとこちらの行動だけは見ている。

 そして、天上で笑い転げているのだ。


 ちくしょうふざけやがって。ほんと、アホな女神に捕まったもんだ。


 しかし――。


「のじゃ、うっかりチート能力を貰ってたら、大変だったのじゃ」


「だな。いや、よかった、チート能力貰わずに転生して。モンスターになってたら、俺はこの世界で生きていける自信がなかったですよ」


「いや、言うて、モンスターはモンスターで気楽なところあるで」


 気楽でしょうね。

 そら、気楽でしょうよ。

 人間の言葉を喋ったと思ったら、とこととことこーって歩いてきて、すんなり俺たちにすり寄って来たアンタの姿を見たら、確かにそう思ってしまいますわ。


 そんで、モンスターになってしまったというのに、まったく言葉に悲壮感が漂ってないところに、追加で気楽さを感じてしまいますわ。


 うん、前言撤回。

 チート貰ってモンスター生活の方が、たのしそうだぞこれ。


 そうしておけばよかった。

 なんと言っても流行りだしね、異形での異世界転生ってさ。


「ところで、いったいなんのチート能力貰ったんだよ」


「のじゃ、代価として、人間の体を奪われるくらいなのじゃ。さぞ、強力な能力を貰ったに違いないのじゃ。なんなのじゃ、なんなのじゃ。説明してみるのじゃ」


 女神の話はそこそこに、俺と加代は話の分かる大根紳士に気さくに尋ねた。

 きっと気軽に答えてくれるだろう、気さくに返してくれるだろう。

 そう思って、大根紳士に尋ねた。


 案の定、大根紳士は俺達の言葉に詰まることなく返事をする。


「女の子の服を透視する能力やで!!」


「……」


「……」


「あれ、聞こえへんかったか? もう一回言おうか? 女の子の服を透視する能力やで!!」


 変態だった。

 この大根紳士。紳士服を着て、たいそう気さくな感じを醸し出しておられるが、まごうことなき変態であった。

 そしてこの喋り方から、転生前からたいそうな変態なのは間違いなかった。


 しかしなにより――。


「なんや自分ら。急に黙りだしてからに。お通夜やないんやから」


「せっかく手に入れたチート能力が」


「服の透視って」


 加代さんものじゃつけ忘れるびっくり能力。

 もっとまともな能力を望もうぜ、せっかく異世界転移したのにさ。


「ちな、お嬢ちゃん安心してや。女の子やから、大人の女は普通に見えんねん。こりゃ一本取られたわ、ワシャロリちゃうねんでってな。ははは」

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