第440話 異世界受付嬢で九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
ロストテクノロジー、PC9〇で動作する上下水道の管理システムの管理の仕事を見つけた桜くん。
「人は、信頼して使えるモノを、延々と使い続けていく。そういう生き物じゃないですか。新しいものより、古くて確実性のあるものにすがる。商品価値がある」
「そうなんだけれども!!」
割と生々しい組み込み業界ネタに、戸惑いを隠せないのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
契約しますか、しませんか。
システムについて一抹の不安を感じずにはいられなかったが――。
「まぁ、PC9〇ならなんとかなるだろ」
俺は上下水道の管理局のサーバ管理者の仕事に就くことにした。
しかしまぁ――。
「軽く見たけど、見事にインターフェスも日本語化されてる。どれだけ転移者に対して甘い異世界なんだよ」
いや、単にこの世界の支配者の趣味か。
なんにしても、いきなり任されたシステムだが、これの管理なら、なんとかこっちの世界でも食っていけそうなそんな気がした。
はぁ。
異世界転移。意外とちょろいな。
「どう、分かりそう?」
「えぇまぁ。あとは、設計書とか、マニュアルとか、そういうのがあるともっと分かると思うんですが」
「確か倉庫にあった気がするな。こう、四角形の箱が書かれた変な文章が」
クラス図かな。
その時代からあったのか。
いや、後追いで整理したのか。
なんにしても、本当、これなら異世界でもなっていけそうだ。
俺はほっと息を吐いて、それからサーバと称される、四角い白い箱から離れるのであった。
一応オーパーツなのだが、いかんせん、向こうの世界でもオーパーツ扱いなので、ありがたみというか、わくわく感みたいなのはまったくといってなかった。
◇ ◇ ◇ ◇
「のじゃ、桜よ。いい感じにお仕事決まったのじゃ?」
「おー、なんとかなぁ。そっちはどうだった?」
のじゃふっふと、腕を組む加代。
得意満面の顔をした彼女は、俺と同じだろう、この世界のハローワークで貰った紹介状に、採用の印字が入ったものを前に出してどや顔をした。
おぉ、やるな、加代さん。
流石は就職することだけは得意な女狐。ばっちり就職キメよったよ。
イェイと俺たちはハイタッチをかました。
「んで、仕事の内容は?」
「のじゃのじゃ。冒険者ギルドの受付嬢なのじゃ。これが本日受けられるクエストになりますって感じで、案内するお仕事なのじゃ」
モン〇ンみたいな仕事だなぁ。
けどまぁ、悪い仕事じゃないんじゃない。
マスコットキャラクター的にも狐耳娘とかも悪くないだろうし。
なんにしても――。
「これでなんとか、無事に仕事は決まった訳だ」
「のじゃ。収入については、どうにかなったのう」
「あとはアレだな、住むところだけ、なんとかなればいいんだけれど」
しばらく宿屋暮らしをしようにも先立つお金がありはしない。
かといって、どこか家を買おうにもそんな金がポンと出てくるはずもない。
アパートなんかが無難なのだろうけど、この世界の賃貸契約がどうなってるのか分からないのでなんとも言いようがない。
どうしたもんかね。
悩む俺たちを横に、なんだい辛気臭い顔をしてと、宿屋のおばちゃんがこちらに寄ってくる。金がないなら暫くつけでいいよ。その好意に縋って、今日も泊まることにした宿屋。異世界で優しい協力者――おばちゃん――に励まされて、俺と加代は顔を上げた。
まぁ、なんとかなるか。
仕事がこれだけすんなりと見つかったのだ、どうにかなる。
とはいえ――。
「仕事は見つかったんだけれど、住むところがなくってさ」
「のじゃ。おばちゃん。どこかいい所を知らないのじゃ?」
亀の甲よりなんやらの甲。
なにかと頼りになるおばちゃんに、俺たちは助けを求めたのだった。
するとおばちゃん、がははと笑って俺の肩を叩く。
「なんだいなんだい、住居の心配かい。それならまったく心配いらないよ」
「……え?」
「……のじゃ?」
それはなんともファンタジーには意外な切り返しであった。
いや、こっちに来てからというもの、割と驚かされっぱなしだけれども。
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