第345話 電子工作で九尾なのじゃ

 IT系同棲ップルの優雅な休日の過ごし方。

 そう、それは電気街デートである。


 大阪は日本橋。

 名古屋は大須。

 京都は寺町。

 福岡は北天神。


 東京は――もう言うまでもないだろう。


 という訳で、俺たちは今、暇を持て余したIT系同棲ップルの休日ということで、電気街のパーツショップにやって来ていたのだった。


「のじゃぁ、Ras〇eryPi Zeroも安定して供給されるようになってきたのう。昔は、1000円コンピューターなのに、供給不足で桁が一つ違うとかだったのに」


「生産ラインが安定化したのかね。俺はArdu〇oyが普通にパーツショップで買えることのが驚きだけど」


「ピコピコ好きじゃのう」


「男の浪漫だろこれは。ゲーム〇ーイ復刻とかしたら即購入する自信あるわ」


 ビニールに封入されてぶら下げられている基板の数々。それらを眺めながら俺と加代はぶらぶらと、なんでもなくパーツを眺めていた。

 いや、うん――。


 別に言うほど、基板とかに詳しい訳ではないのだけれどね。


「コンデサとか、抵抗とか、いっぱいあるけど――こんなんどこの誰が買うのかしらね」


「のじゃ? 工場とかで冶具作るのに必要になったりして買ったりするのじゃ?」


「電子系も強いのね加代さんてば。ごめん、聞いた俺がアホでした。本当に」


 IT系同棲ップルの優雅な休日とか言うたけど嘘です。

 パーツショップとか見て回っても、言うほど楽しくありません。いや、Ras〇erryPiやAr〇uinoくらいなら、流石に分かるので楽しいですけど――そこから先の素養は持ち合わせておりません。


 だってオラ、情報系の専門学校卒だから。

 コンデサとか抵抗とかそういうの分かんないから。

 LEDの光らせ方からして怪しいから。


 その点、加代さんはすげぇよ、そういうのも一応できるんだから。さっきから、プリント基板と抵抗を眺めてなんか真剣な顔してるんだもの。


 IT系女子だわ。

 流石上級資格持ってる狐は違うわ。

 すぐクビになるけど。


「……で、加代さん、何をいったいお求めで?」


「のじゃぁ。せっかくラズパイ〇ロが手に入るのじゃ。何か作ろうと思ってのう」


「お、やる気やんけ。なに作るの? カメラサーバ? それともロボット?」


 そうじゃのう――と加代が天井を舐めるように見る。

 具体的に何か作りたいものがある訳ではないようだ。それなのに、パーツショップに顔を出す辺りが、いかにもIT女子って感じだな。


 いやしかし、ラズ〇イで工作となるとやっぱりIOTかね。

 Wifi飛ばしてお外の情報を収集するとかかかしら。


 そんなもん収集してどうするんじゃという気もしないでもないが――。

 すっかりと想像がつかないなと生温かい目を向ける俺の前で、うむと加代が頷く。どうやら何を作るか見当をつけたらしい。


「まだ、ちと時期には早いが、こういうのは準備が肝心。早い目に手を付けておくとするかのう」


「おっ、季節に関係するもの? これからの季節ということは――秋雨に警戒して、雨センサとか作ったりする感じ? それで洗濯物を自動取り込みするとか?」


「のじゃぁ、やれやれ、何を言っておるのじゃ」


 まったく分かって居らんのうという顔をする加代さん。

 そんな彼女は――カメラとラズ〇イゼロを手にすると、馴れた感じで会計を済ませて、そのままパーツショップを後にした。


 はて、監視カメラを作るだけか。

 あれだろうか。もしかして、俺の浮気防止とか、そういうのかな。

 やれやれそんなことしなくても、俺はお前に――ぞっこんではないけれど、裏切るような真似はしないってのに。


 なんて思っていると彼女はその足で、何故かパーツショップの近くにある――。


「〇友鉄砲火薬店!!」


 ぶっそうな会社へと足を向けたのだった。


「のじゃ。これからヒグマが出る季節。遠隔操作で発砲できる〇を作っておけば、きっと狩りが便利になるのじゃ」


「やめて!! そういうのは違うオキツネ作品に任せておけばいいから!!」


「えぇ? せっかく自動狩猟ロボ〇形くん一号を造ろうと思ったのに……」


「そっちの漫画から影響受けるのかよ!!」


 なんにしても、現代社会で生きることを選んだオキツネなんだから、そういう野性は忘れ去ってフォックス。

 物騒なんだからいろんな意味で。

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