第337話 男1人、狐1匹、アパート、ラッ……で九尾なのじゃ

 珍しい肉を貰った。


 いや、珍しい肉っていうか、こんなん獲っていいのかという肉を貰った。

 それは加代の母親――カンボジアに住む妲己さんからのクール宅配便だった。


 配達のラベルには、『絶対に二人で食べるように』と、書かれている。


「……あかん」


「なにがあかんのじゃ」


「115話やんけ」


「のじゃぁ? 人情に掉さして九尾なのじゃのことなのじゃ? いやぁ、久しぶりに東南アジア旅行編なんて口にしたのじゃ。今これ追ってる人の中で、何人が憶えてるかのう」


 違うわいすっとこどっこい。

 こんなカクヨムの片隅にひっそりと連載されている小説の115話じゃないよ。

 もっとこう、メジャーなアレの115話だよ。


 なんなの。

 どういうつもりなの。

 別作品では、東京〇ールネタにするし。そんなに他所の出版社様の作品に走って、カドカワ様にご迷惑をおけかしたいの。

 やめなさいよ、そんなことしたって貴方、虚しいだけじゃない、こんなの。


「なんにせよ貴重なたんぱく質なのじゃ。ママ、ありがとうなのじゃ」


「ありがたくない!! 加代さん!! 絶対にこの肉は食べちゃいけない!!」


「のじゃ、桜? どうしたのじゃいったい? 最近変じゃぞ?」


「そりゃ変にもなりますわいわいわいわいやいやい!!」


 この肉を食ったならどうなるか。

 ナウでヤングでジャンプな俺は知っているんだ。


 この九尾……キツネ過ぎる!!

 どう見ても加代さんが……九尾っぽい……。


 とか、そういうことになるんだ。

 そして始まるんだ。大相撲桜場所がこのアパートで。


 はー、どす恋、どす恋。


「駄目だ!! ダメだだめだどんどこどーん!!」


「桜ァ!?」


 肉をそのままゴミ箱にぽーいする構えに入った俺。それを何をするのじゃと加代さんが追いすがって止める。


 えぇい、止めてくれるな加代さんや。

 この世には食べていい肉と悪い肉があるのだ。


 この肉は食べちゃいけない肉。

 だいたいこの肉の元になった生物、条約で保護されてて食べちゃいけないから。

 割とマジで食べると問題になる肉だからね。


「許せ加代さん!! こればっかりは、こればっかりはまずいのじゃぁ!!」


「まずいまずくないは食べてみてから考えればいいのじゃ!! せっかく貰ったお肉を調理もせずに捨てるなんて――勿体ないのじゃ!!」


「調理をするだけでもまずいのじゃぁ!! その匂いに当てられて、今夜はロングナイトしちゃうことになっちゃうのじゃぁ!!」


 うちの両親に加えて、まさかの加代ちゃんママまではやく孫の顔見たい同盟に参加しおったか。おのれ、爺婆どもめ――そうはいくか。

 絶対に孫なんて作ってやらないからな。

 いいか、絶対にだ。


 と、その時――。


「ふぅ、やれやれ。急に蝗の大軍に襲われるとはツイてないぜ」


 俺のアパートの扉が急に開いたかと思うと、いきなりそいつは入って来た。

 そう、奴は、逞しい身体を持った、男の中の男――。

 頼りになる関東アイヌの男――。


「よう、ひさしぶり……」


「ライオンディレクター」


 ウコチャ〇プコロしちゃうの。

 え、ちょっと待って、この人が出てきたら本当にやばいんじゃないの。そんな動揺を隠しきれない俺の手の中から、加代さんは肉の入った発泡スチロールの箱を奪い取ったのだった……。


 なお、肉は普通に松阪牛A5ランクだった模様。

 少し早めのお中元でしたとさ。


☆カドカワなのにジャ〇プネタ……!! 集英〇さん許してください!!


【次週予告 大相撲桜場所……開幕!! はたして孫はできるのか!!】

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