第290話 超大作どスケベゲームで九尾なのじゃ
唐突ですが、私、桜はどスケベゲームを嗜んでおります。
健全な三十代ギーク系男子として、そりゃもう、パソコンでエロいゲームをやることは義務といっていいでしょう。
スケベゲーやらずして、この業界に入らない男子は居ない。
そう信じてやまない訳であります。
いやまぁ、流石に冗談だ。
世の中にはそういうのとは抜きに、純粋にプログラムが好きでこの業界に入ってくる奴もいる。一概にどうこうということはできない。
かくいう俺も、熱く語ったが、別にノリで言ってみただけである。
というのも、俺は今某青と白の市松模様で有名な、電気量販店のアダルトコーナーに来ていたからだ。
うん、嗜むというのは嘘じゃない。
ただ、別に月に何万も美少女ゲームにつぎ込むような、廃人ゲーマーではないというだけだ。そこまでヘビーなギークではないがやるときはやる。
カジュアルどスケベゲーマーという、まぁそういう奴である。
というか、そういうタイプの人間だったら、狐同居人に対して、もっと興奮してあれやこれやうっふんあっはんしているはずだろう。そこらへんから察して欲しい。
週末のそこは混んでいた。
所謂、そういうゲームの発売日というのは、月末の金曜日に集中している。
いかにもオタクでございという感じの皆さまに混じって、俺は、店の中で最も広い陳列スペースの方へと向かう。
すると、そこにお目当てのそれはあった。
「……あった、ソード
ソードシリーズ。
スケベゲームの黎明期から存在する、超古参タイトルである。
ソードというどスケベゲームの主人公には不向きな、ひたすらに紳士な冒険者が、相棒のウルトラスケベなエルフとあれやこれやする話で、なんやかんやで三十年くらい続いている超大作だ。
流石にそれくらい続くと、広げた風呂敷が大きくなって、どうやって畳むんだこれと長らく言われていた作品である。だが、ちょうど、俺が就職して三年目くらいの頃に
また、その公開と同時に、本作、
かくいう俺は、専門学校の頃に悪友から勧められ
「――ガンジンちゃん、前髪降ろしてる。あのでこっぱちがよかったのに」
けどまぁ、これはこれで、いいよね。
そう、なにを隠そう、俺もこのゲームのファンなのである。
普段はそういうゲームやらないけど、こいつだけは別腹なのである。
次々と、俺の前にいる人間が、それを持ってレジへと向かう。
買わないなら寄越せよ。そんな視線を感じる中で、俺は、ぎゅっとそのパッケージを胸に抱きしめた。
よし、買いに行こう。
そして今日の夜からさっそく攻略開始しよう。
パソコン共用だけれども、デスクトップのショートカットと、スタートメニューから消しておけば、きっと加代の奴に見つかることはないだろう。
大丈夫。絶対にバレない。
バレたとして何が悪いのだろう。
男には、そういうあれだ。あれが、あるんだから仕方ないだろう。
語彙力が崩壊していて申し訳ない。
とにもかくにも、最新作にして最終作。この作品をやらずには、今生を俺は終えることはできないだろう。それくらいに思っている。
やらねばならぬのだ!!
このゲームを!!
俺は、なんとしてでも……!!
たとえ、同居狐がいようともそれはそれ!!
このゲームの完結を見届ける為だけに、俺はこの時まで生きて来たのだから!!
「いらっしゃいませなのじゃー。当店のポイントカードはお持ちですかなのじゃー」
「あー、はいー」
「成人向け作品なので年齢確認させていただきますのじゃぁ。免許証お持ちですかなのじゃぁ?」
「え、そこまでする?」
普通、このフロアでお会計する時点で、そういうのはお察しだよね。
今日は各社大作の発売日なんだからそんなのやらなくってもいいじゃないのよ。
というか、はやくレジを済ましてくれ、いつ同居狐が現れるか分からんのだから。
そんな思いでレジ店員を見ると。
「……のじゃぁ」
「ふぅん、ほぉん、『俺は真面目戦士なのに、なんで放っておいてくれないんだ』、か。なかなかいい訳がましい台詞じゃのう。のう、桜」
「……真面目なんだ。とにかく、真面目な、スケベゲームなんだ。限りなく健全、そう、スケベだけど、健全だと思ってくれていい!!」
まるでそこに居るのが当然というように、加代さんがレジに立っていた。
うん、まぁね。
この展開でこうなるオチは分からないでもないよ。
脳味噌が沸いてなかったら、きっと気がついていたと思うよ。
そうだわなぁ。
忙しいレジのスタッフに回されるわな、この便利アルバイターさんは。
「のじゃぁ、真面目なスケベゲームか。桜は、ほんに真面目じゃのう」
「はっはっは、そうだろう。真面目が一番さ」
「ほっほっほっほ」
「はっはっはっは」
その日、その夜、我が家にお狐の嵐が巻き起こったのは言うまでもない。
なお、ゲームは仕方ないので、D〇Mでダウンロードして、こっそりプレイすることにしましたとさ。特典のムックとか欲しかったってのにさ、とほほ。
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