第七章 第二話


「行きます!」


 芳佳の足元に魔法じんが広がった。


「うわっ! まだこんなに魔法力が残ってんのか!」


 魔法陣の大きさに驚くエイラ。


「芳佳ちゃん!」


「発進!」


 づかうリーネをり切るように、震電はかんぱんすべるように進み始める。


 しかし。


「宮藤!」


「魔法陣が安定しない!」


 ハルトマンとバルクホルンは、芳佳の魔法陣がてんめつしていることに気がつく。

 進路は左右にぶれ、身体からだき上がらない。


「やっぱり無理なのよ!」


 悲鳴に近い声を上げるミーナ。

 ところが。


「飛んじまえ、宮藤!」


「いっけ〜、芳佳!」


「もうちょっとだ!」


「芳佳ちゃん!」


 シャーリーが、ルッキーニが、エイラとサーニャがせいえんを送った。


「あなたたち……」


 信じられないといった顔のミーナ。

 そして。


「宮藤さん!」


「芳佳ちゃん、思い出して! ユニットとひとつになるの!」


 ペリーヌとリーネの声を聞き、芳佳の魔法力がだいに安定してくる。

 さらには。


「宮藤さん! あなたなら飛べる!」


 艦橋の杉田艦長までがさけんでいた。

 甲板がれたところで、一瞬、姿が消える芳佳。


「宮藤さん!」


 ミーナまでもが身を乗り出す。


「飛んで、芳佳ちゃん!」


 リーネの叫びに反応するかのように、芳佳の身体がい上がった。


「やりやがった!」


「やったぞ!」


「うん!」


 飛び上がるようにして喜ぶシャーリーやエイラ、それにバルクホルン。


「飛んだ……」


 ミーナは起こり得ないはずの光景をの当たりにして、言葉を失う。


「ほんと、あきれた人ですわ」


 呆れ果てたような口調ながらも、ペリーヌは喜びをかくせない。


すごいよ、芳佳ちゃん」


 と、こちらはなおなリーネ。


「……ねえ、トゥルーデ、何故なぜ宮藤さんは飛べたの?」


 ミーナは疑問を親友にぶつける。


「ふ、それが宮藤だ」


 まるで自分のことのようにるバルクホルンだが、説明しろと言われても筋肉担当の彼女には無理な話だ。


「……宮藤だけじゃないかもよ」


 と、二人の注意を引くハルトマン。

 ミーナが振り向くと、そこには残りのウィッチたちの決意の顔があった。



「くっ!」


 大和を目指す芳佳はコアに向けてじゆうつが、だんがんはことごとくシールドにはじかれていた。


だ! シールドで当たらない」


 一方、コア表面ではようやく、坂本が意識を取りもどしていた。


「な、何だこれは!? 一体私は!?」


 とつにはじようきようを理解できない坂本はあたりをわたし、芳佳がこうげきしているのに気がつく。


「ネウロイがシールドを? ……まさか!?」


 坂本はインカムを通じ、芳佳に呼びかけた。


「逃げろ!」


『坂本さん!?』


 芳佳の声が返ってくる。


「無理だ、宮藤! あきらめろ!」


『えっ!?』


「ネウロイは私の魔法力を使ってシールドを張っている! たおすことなど不可能だ!」


『ウィッチに不可能はありません!』


「!」


『坂本さんがそう言ったんじゃないですか!?』


 芳佳は大和のかんしゆとつしんした。

 シールドでビームを弾き返して前進するが、大量のはんようネウロイがさらに立ちふさがる。

 しかし。

 ダダダダダダッ!

 後方からのえんこうげきが汎用ネウロイをらした。


「えっ?」


 り返った先には、501のウィッチたちのゆう姿が。


「芳佳ちゃん!」


「私たちもいますわよ!」


 芳佳のまわりに集まる一同。

 だれもが、魔法力がきていた。

 それなのに、誰もが飛べた。

 芳佳を守ろうとする、その一心で。


「行くわよ! フォーメーション・ビクトル! 宮藤さんをえんします!」


 命令を下すミーナ。


りようかい!」


 ストライクウィッチーズは、編隊を組んでとつげきした。


「宮藤さん、あなたの可能性を信じるわ。ネウロイを倒して」


「さっさとやって帰ろうぜ、宮藤」


「そうだ! 行け、宮藤!」


「宮藤なら楽勝だよ〜!」


たのみましたわよ、宮藤さん」


「芳佳ちゃんなら、だいじよう……」


「今日のお前はついてるぞ、宮藤」


「いっけ〜、芳佳〜!」


がんって、芳佳ちゃん!」


 ミーナが、シャーリーが、バルクホルンが、ハルトマンが、ペリーヌが、サーニャが、エイラが、ルッキーニが、そしてリーネが芳佳を前方に送り出す。

 ビームをかいくぐり、一気に大和の艦首に達する芳佳。


「烈風丸!」


 芳佳の手が烈風丸のつかにぎる。

 だが、ネウロイ化した艦体と一体化した烈風丸はけない。


「っ! 頑張って、しんでん!」


 ストライカーのプロペラがフル回転し、ほうじんが大きく広がる。

 ピシッ!

 その直下のネウロイ化した艦体にれつが走った。

 亀裂は周囲に広がり、ネウロイ化した艦首がほうかいしてゆく。

 次のしゆんかん


「たああああああああっ!」


 宮藤は烈風丸を頭上にかかげていた。


「おおおおおおおおっ!」


 そのまま飛び立った芳佳は、ビームをかわしつつ、コアに向かって最短きよを飛ぶ。

 魔法力がすさまじい勢いで烈風丸に流れ込み、かがやきを帯びた。


「やめろ、宮藤! 烈風丸はお前の魔法力を吸い尽くすぞ!」


 必死にさけぶ坂本。


「構いません!」


 正眼に構えた芳佳は叫び返す。


「私はひとりじゃない。私は501のみんなといつしよだ!」


 静止する芳佳をオーラが包み込む。


「お願い、烈風丸! 私の魔法力を全部あげる! だから、その代わりにネウロイを倒して! 私に真・烈風ざんたせて!」


 芳佳は全身の魔法力を、手にした烈風丸に集中した。

 そして、そのまま上段に振りかざすと……。


「真・烈風斬!」


 地上最大級のしようげきがネウロイを直撃した。


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