鬼神カムロ
白河貞仁
第1話 桃太郎の鬼退治
石造りの大きな蔵は、観音開きの入口が正面中央にあった。
その隙間からは小さい角が2本、ちょこんと先っぽを覗かせている。
角の持ち主がもぞもぞ、もぞもぞと恐る恐る、隙間から角を全部出し、もじゃもじゃの茶色がかった黒い頭髪、赤茶けた肌、おどおどと周囲を見渡す黒い瞳を、何かに
首から上を戸の隙間からひょっと突き出した格好のため、体の大部分はまだ倉の中だった。
木製の古びた灰色の戸に首を挟み込み、頭だけを外に出して倉の周りをこわごわと見回した。
夜は明けたばかりで
首の無い者。
そこは、まさしく、黄泉が広がっていた。
中には
住んでいた者は
それを目にした2本の角の持ち主は動けなかった。
この黄泉を作り出した死神に。
死神は角を持つ者達を皆殺しにした。
死神の仲間達は頭から角が生える人々を総じて“鬼”と呼んだ。
そして、鬼が住まう島を鬼ヶ島と呼んだ。
そうここは死神、又の名を桃太郎
桃太郎が鬼退治した鬼ヶ島であった。
鬼は死に絶えたのか、
その名は、カムロ。
死神に見初められた、あの小さな2本の角の持ち主である。
鬼神カムロ 白河貞仁 @GOSHIRAKAWA
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