カルマ わたしの名前を探す旅①
※前回のあらすじ※
愛理栖はひかるの前で突然頭痛になった。
- ひかるは心配して病院に連れて行こうとしたが、愛理栖は断った。
- 愛理栖はひかるとの思い出を語り、頭痛の原因を明かした。
愛理栖はひかるに創造者が原因だと明かした。
※要約 終※
彼女の言葉を聞いた後、消えてしまった自分の母の事もあり、僕は彼女の提案に応じる事にした。
「それで愛理栖ちゃん? 探す場所にはどこか宛はあるの?」
「すみません」
考えてなかったのか……。
「じゃあさ、 愛理栖ちゃんのご両親に聞いてみようよ」
「私が両親といろいろあっておばさんと暮らしてるって話、
以前ひかるさんにしましたよね?」
彼女の気まずそうな反応をみて、 僕は軽はずみな言動で地雷を踏んでしまった事をひどく後悔した。
「一瞬忘れてただけなんだ。 デリカシーの無いことを言って、本当にごめんね」
「気にしてないんで大丈夫ですよ」
少し下を向いてそう答えた彼女を見て、
僕は女性の大丈夫は大丈夫じゃない事が多いって言われるのはこういうことなんだなと思った。
「愛理栖ちゃんはどこか参考になりそうな場所思い浮かばない?」
「私の事は愛理栖でいいですよ。
う~ん、ごめんなさい。思い浮かばないです。
とりあえず、あたしのおばさんの家に来てみます?」
「いいの? 行く行く!」
僕らはその足で彼女のおばさんの家に向かった。
廃ビルから家まではそう遠く無かったので、 歩いてすぐに行くことが出来た。
おばさんの家は平屋建ての日本家屋だったが、
中学生がまさかそこで暮らしているとはにわかには信じがたいような、 古めかしい老居だった。
この家の家主は何十年も前からずっと老人ホームに入っていて、
今住むのは、 身内のつてで入居した※おばさんと愛理栖の二人だけらしい。
「ごめんくださ~い!」
僕が玄関の外で一言あいさつしている間、
愛理栖は横でドアをなにやらゴニョゴニョやっている。
「どうしたんだよ愛理栖? 早く入ろうぜ」
「ふっ、んー、んー!
ひかるさんすみません。 この玄関の引き戸、
たてつけが悪くて」
愛理栖はお湯が沸いたヤカンのような表情で引き戸を開けようと頑張っていて、
その様子はどこか滑稽で面白く感じた。
「愛理栖代わるよ。 どいてみ」
僕はすまし顔でそう言うと、 表情を崩さないよう気をつけながら力を込めて引き戸を引いた……はずだった。
「ふっ、 んー? あれ……、 んー 、んんんー!」
「ん? どうしました、 ひかるさん?」
愛理栖は生まれて間もない赤ん坊のような純粋無垢な瞳で僕を見つめ首を傾げていた。
こういうときにそういう顔しちゃう~? お願い、 察して……。
僕は額の汗を拭いながら心の声でそう嘆いていた。
僕は何かいい方法を考えるためにまずは時間を稼ごうと
思い始めた矢先、 悔しい程すんなりと活路は開けた。
『ガラガラガラ~!』
「は……い?」
僕は目を丸くしてその場に立ち尽くした。
老居からは、 おばさんと呼ぶにはまだ若い
首にタオルを巻いたTシャツジャージ姿の女性が出てきたのだ。
寝癖をお洒落に採り入れたアホ毛が魅力的な小麦色の髪、
生活感ある緩めのシャツ、
ワイルドな魅力を感じさせる露出させた手足、
少女のような活発さを演出する裸足、
人目を気にせずあえて見せるそのハードボイルドなあくび……、
強く漂わせたアルコールの……香り?、
こんな残念な大人、綺麗に描写出来るか~!
見るからに『ずぼらなオヤジ』の格好じゃね~か!
「君さ、さっきから一人でぶつぶつ言ってるけど……大丈夫?」
僕がちゃぶ台をひっくり返しているところに、 女性はまるで可哀想なものでもみるかのような哀れな表情でそう言ってきた。
「早く入りなよ」
「は、はい。おじゃまします」
僕がどうやっても開けられなかった引き戸がどうして目の前の女性に簡単にあけられたのか。
どうしても知りたかったが、 頭の中の整理が追い付かなかったのでやめておいた。
「おばさん、ただいま!」
愛理栖も遅れて玄関から入って来た。
「愛理栖おかえり~」
「また~? お客さんが来てる時そのだらしい格好やめてって
いつもいってるじゃん!」
愛理栖はそのとき別人かと疑ってしまう程老け込んだ呆れ顔をしていた。
「まあまあ、そんな真面目な顔でケチくさいこと言いなさんなって。
ところで、 こちらの殿方はあんたの彼氏?」
おばさんはその目を細め、 愛理栖にニヤリとせせら笑っていた。
「ち、違うわよ!おばさんのバカ~!」
顔をトマトのように赤くしながら愛理栖は必死に否定していた。
「おばさんにからかわれてるだけだよ」
僕はそう言って愛理栖をなだめると、 おばさんのほうへ視線を向けた。
「はじめまして。 五色っていいます。
僕は愛理栖さんとは顔見知りだったんですが、 今日たまたま再会して……」
「それで付き合っちゃったんだ~♪」
「おばさん!」
愛理栖とおばさんのやりとりをみていて、
仲のいい家族だなと僕は思った。
「まあ、玄関で立ち話もなんだし、
あがったあがった!」
「はい。おじゃましま~す」
「おばさん、私シャワー浴びて着替えてくるね」
愛理栖がいない間、 僕はおばさんからスイカとビールを頂いた。
そして、
愛理栖のことをどう思っているのか?
僕がしている仕事の事、 兄弟はいるか?
など、 答えにくい突っ込んだ質問を沢山された。
「実はえ~と、 今日伺ったのは愛理栖さんの名前の事で」
「聞いたんだね。 それで、 君はどこまで知ってるんだい?」
「まだ何も。両親とは別に暮らしているとしか」
おばさんは真剣な態度で話に応じてくれた。
「あの子はさ、こんなあたしが言うのはなんだけどね。
だいぶ変わってるでしょ?
あの子ね、 自分が人間じゃ無い5次元のなんたらって本当に信じてるのよ」
「……そうだったんですね」
僕は相づちを打ちながらおばさんの話を聞いていた。
「それで学校でも友達が出来ず不思議ちゃんって呼ばれイジメにあってね、
両親もその事は知っていて転校を何度も繰り返したらしいのさ。
それでもイジメは無くならず、 不登校になって勉強も他の子たちから大きく取り残されちゃって次第に家族の仲が悪くなっていったらしいわ。
結局両親は離婚したの。 その後の理由はあたしには詳しくわからないんだけど、愛理栖が泣きながら私の家に来てね。
愛理栖は一度違う親戚の家に預けられたらしいだけど、
家の人とうまく打ち解けられず孤独だったらしいのさ。
あたしはそんな愛理栖が可哀想でね。 だから、あの子の母親の家に行って、あたしが愛理栖を引き取ることにしたの。
愛理栖は両親に捨てられたかわいそうな子なんだよ。
愛理栖は自分が原因で両親を離婚させてしまったって言って両親を恨んでないのにだよ。
全く、あの子の親はひどい親だよ!」
「……」
僕は返す言葉が思い浮かばなかった。
※今回のあらすじ※
僕は愛理栖とおばさんの家に行き、愛理栖の辛い過去と5次元の信念を聞いた。
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